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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第17章 亀裂の響き【沖田総司編】


握られた手に熱が集まり出す。
私の手は恐らく熱くなっているはずだけど、沖田さんの手はどことなく冷たかった。

冬のせいで体温が低くなっているせかもしれない。
だけど、その手の冷たさがなんだが儚く感じてしまう。
そう思っていると、沖田さんが更にぎゅっと私の手を握ってきた。

「千尋ちゃんの手って、温かいんだね」
「そ、そうですか……?」
「うん。冬の日はいいね」

そう話す沖田さんは少しだけご機嫌のようだった。

「ねえ千尋ちゃん」
「はい?」
「後ろから、男が二人付いてきてるのわかる?」

沖田さんの言葉に私は目を見開かせて、後ろを振り向こうとしたが肩を抱き寄せられてそれを制された。

「後ろは振り向かないで。このまま裏路地行くけど、いいよね?」
「は、はい……」

もしかして、付いてきてるという男達は例の犯行をしている者達なのだろうか。
囮作戦が成功したということなのだろうか、私たちを襲おうとしているのだろうか。
そんな事を考えていれば、隣で沖田さんが笑う声が聞こえた。

「そんな不安そうな顔しなくても平気だよ。僕が守ってあげるから」
「え……」
「今の君に死なれたら、色々困るからね。綱道さん探しとか、炊事当番に洗濯物とか」
「あ……はい」
「じゃあ、裏路地入るけど……僕の傍から離れないように」

そう言って沖田さんは私の手を握ったまま、裏路地へと入っていく。
裏路地には人がいなくて、私たちの足音だけが聞こえてくる……そう思った時だ。

後ろから二人分の足音が聞こえてきた。
やっぱり囮作戦は成功したんだと思った時、沖田さんが足を止める。
そしてゆっくりと後ろを振り返った。

「さっきから僕たちの後を付けてきてるけど……君たちなのかなあ?最近、京を騒がせている事件の犯人は」

私も後ろを振り返れば、刀を持った男が二人立っている。
男達はニヤリと笑みを浮かべると、手を刀へと持っていく。

「金目の物と女、置いていってもらおうか」
「……嫌だ、って言ったら?」

沖田さんはニヤリと笑った時だった。
男達は刀を抜き取り、こちら側へと走り出してきたのだ。

「お、沖田さんっ!」
「平気だよ、千尋ちゃん。僕たちは二人だけじゃないんだからさ」

その時、建物の物陰から数人飛び出してきた。

「ようやく尻尾を出したな」
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