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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第17章 亀裂の響き【沖田総司編】


「この時を待ってたぜ!」
「なに!?」

飛び出してきたのは、土方さん達だった。
犯人達は土方さん達の姿を見ると目を見開かせ、自分たちが囲まれていることに焦りだしている。

「お、お前らは……新選組!?」
「へえ、羽織を着てないのに分かるってことは顔を見た事があるってことか」
「てことは、そこの夫婦は……」

犯人達は慌てた表情で私たちを見てくる。

「僕は、新選組一番隊組長の沖田総司。残念だったね、ただの町人じゃなくて」

そこからはあっという間だった。
犯人達は抵抗したが、あっという間に土方さんたちに捕縛されて原田さん達が屯所へと連行した。

「あーあ。美味しいところ、土方さん達に取られちゃったね」
「……沖田さん、捕縛したかったんですか?」
「んー?斬っちゃいたかったね」
「斬っ……沖田さんらしいですね」

この人はなんでこう、物騒なんだろうか。
そう思いながら息を吐いていると、沖田さんは私の顔を覗き込んできた。
顔の近さに、思わず後退りをしていれば彼はにんまりと笑う。

「でも、勿体ないなあ。もう犯人も捕まっちゃったし、これで君の娘姿も見納めかあ」
「え……」
「馬子にも衣装って言ったけど、よく似合ってるよ。こんなお嫁さんが本当にいたら、嬉しいけどね」

じわりと顔に熱が集まる。
まさかの言葉に、喉から声が出てこなくて、沖田さんの顔を見つめることしか出来ない。

「さてと、別宅に戻るよ千尋ちゃん。着替えて屯所に戻らなくちゃ」

私の顔を見て、小さく笑った沖田さんは歩き出した。
そんな彼の後を、私は顔を真っ赤にさせながら追いかける。

(今日の沖田さん……心臓に悪いっ……!)

そして、私と沖田さんは近藤さんの別宅に戻り着替えることにした。
着替える最中、沖田さんの【こんなお嫁さんが本当にいたら、嬉しい】という言葉を思い出しては顔を真っ赤にさせていたがーー。

「お疲れ様、千尋!」

屯所へと帰宅しあと、千鶴が直ぐに迎えに来てくれた。

「どうだった?沖田さんと夫婦役したっていうけど……」

千鶴の問に、私は身体を硬直させた。
流石に色々恥ずかしい思いをしたなんて言えなくて、口ごもっていれば千鶴が首を傾げる。

「色々、あったよ……」
「……色々って?」
「色々は、色々……」

その日、私は沖田さんの言葉を思い出しては赤面するのだったーー。
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