第17章 亀裂の響き【沖田総司編】
そんな幹部の方々に、沖田さんは面白くなさそうに唇を尖らせる。
まるで拗ねた子供のようだと思いながらも、私と千鶴はお互いに顔を見合わせた。
「じゃあ、皆は何か他にいい案があるんですか?僕は囮作戦が良いと思うけど」
「まあ、確かに囮を使えば捕まえれるかもしれんが……」
「でしょう?近藤さん」
「だがなあ……雪村君たちに協力してもらうのはなあ」
近藤さんは唸りながらも腕を組む。
すると土方さんがチラリと私たちへと視線を向けてきた。
「まず、こいつらが協力してえかどうかだろうが。勝手に俺たちで協力させるかどうは話し合う前に」
その言葉に沖田さんは【ふぅーん】と言いながら、私たちの元に歩いてきた。
「ねえ、君たち。少しは僕たちの役に立ちたいよね?普段厄介になってるんだから、このぐらいは協力したいよね?」
「え、あ……えっと」
「そ、そうですね……えっと」
脅しとも取れるような言葉に、私と千鶴はたじろぎながら顔を見合わせる。
だが確かに協力はしたいとは思ってはいるのだ。
沖田さんの言う通り、私たちは普段新選組にご厄介になっている。
何か役立ちたいとは思うけど……千鶴が危険な目に遭うのは避けたい。
「あの……ご協力はしたいです」
「千尋君」
「ですが、囮作戦をするのなら私だけでお願いします。千鶴を危険は目には遭わせたくないので」
「千尋、私は別に平気だよ?」
「駄目。私が千鶴に危険な目に遭って欲しくないし、寺田屋の一件で千鶴は一回危険な目に遭ってるし……」
そう言うと、千鶴は言葉を詰まらせていた。
「千尋ちゃん、いい子だね。ほら、近藤さんに土方さん。彼女も協力したいって言うんだから囮作戦しましょうよ」
「うーむ……本当にいいのかね?千尋君」
「はい。皆さんのお役に立てるのなら、させてください」
そうして、囮作戦が決行する事が決まった。
囮作戦なので、私は女の格好をする事が決まり、女物の着物は近藤さんがご贔屓にしている呉服屋で仕立てることになった。
そして翌日。
私は近藤さんに連れられて、彼の別宅に着ていた。
流石に屯所で女物の着物を着替えて出るというわけにもいかないから。
「着物は部屋に用意してあるぞ。君に似合いそうな物を用意したから」
「ありがとうございます、近藤さん」