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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第17章 亀裂の響き【沖田総司編】


ー慶応二年・十一月ー


木々の葉が紅に染まりだし、紅葉の季節を迎えた頃。
冬の訪れが感じられるようになり、頬を撫でる風が鋭い冷たさを帯び出した。

そんな寒さの中、隊士の方々の話では最近京を騒がせている事件が起きているらしい。
なんでも、若い夫婦が襲われて金銭的な物を奪われたり暴力を振るわれたり、刀で斬られたなんて事件が起きているとのこと。

(物騒な事件だなあ……)

なんて思いながら、私は千鶴と共にお茶の入った湯呑みをお盆に載せながら広間へと向かった。

「新選組に最近起きている若い夫婦を襲っている奴らを捕まえろというご達しが下った」

広間に入れば、近藤さんがそう言葉にしていた。

「若い夫婦を襲ってる奴らって、あれだよな?金銭的な物を強奪したり、刀で切り付けてくるって奴らだよな」
「ああ。最近多発していて、奉行所や見廻組も警戒しているんだが……どうも犯人が姿を現わさないみたいでな」
「で、新選組にも協力してほしいとのことだ」
「でも協力してほしいと言っても、奴ら姿を現さないんですよね?どうやって捕まえるんですか?」

沖田さんがそう聞くと、近藤さんは悩んだ顔になる。

「それがな、いい考えが浮かばんのだよ……」
「それなら手っ取り早く囮作戦なんてどうです?」
「囮作戦?」

沖田さんの提案に、幹部の皆さん達が眉を上げる。

「若い夫婦を演じればいいんですよ。それで囮作戦に引っかかった犯人を捕まえましょうよ」
「総司、囮作戦っていっても女はどうするんだ」
「嫌だなあ、土方さんったら。女の子ならこの屯所に二人もいるじゃないですか」

そう沖田さんが言った瞬間、幹部の方々の視線が私と千鶴に注がれた。
その視線に思わず身体を跳ねさせていれば、沖田さんがにんまりと笑う。

「ねえ、千尋ちゃんに千鶴ちゃん。君たち、ちょっとは僕たちの役に立ちたくない?」
「え……」
「待て待て、総司!相手は刀を持っていたりするんだぞ。その囮作戦中に雪村君たちになにかあれば、綱道さんに面目が立たん!」
「そうだぞ総司!千鶴と千尋になにかあればどーするんだよ!」
「二人に囮になってもらうのは危険じゃねえか?男はまだ良いもの、女のこいつらが怪我したら大変だろうが」

沖田さんの提案に、幹部の方々は口々に反対していく。
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