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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


そして、土方さんの言葉に近藤さんも苦い表情を浮かべていた。
羅刹隊のことは、土方さんも近藤さんも頭を悩ませているみたい。

「……ま、いくつか手を考えてみるか」
「そうだな。細かいことはトシに任せるよ。ところで、この間聞いたところによると、将軍後見職の一橋慶喜公がだな……」
「あの人か。家康公の再来なんて言われてるそうだな。確かに頭はいいのかもしれねえが……」

私はそろそろ席を外した方がいいかもしれない。
そう思い、土方さんと近藤さんに挨拶をしてから、本来の目的である屯所の入口前の掃除に取り掛かった。

掃除をしながら、ふと土方さんが言っていた言葉を思い出した。
羅刹隊が死体を切り刻んでいるという話を思い出しながらも、確かに最近、山南さんが率いている羅刹隊の様子はおかしいのだ。

(以前より、気性が荒くなってるよね……)

土方さんが言ってた通り、後日、三条大橋の制札を見張れというお達しが、新選組に届いた。
犯人は、土佐藩士八名。

鴨川で待ち受けていた原田さんたちの活躍で、何とか捕まえることができたみたい。
その一件で会津藩から報奨金が出たということで、皆さん方は島原へと出かけてしまった。

屯所に残った私と千鶴は、二人で夕食を取っていたけれど、私は胸の奥に鉛を詰め込まれたような気分になって箸が進まなかった。

「どうしたの、千尋。食欲ないの?」
「……新選組も羅刹隊もこれからどうなってしまうんだうと思って……」

そう呟いた時だった。
当然ふすまが開いて、山南さんが部屋へと踏み入ってきたのである。

「山南さん?あの、なにかご用ですか……?」
「こんばんは。二人とも、今日は、皆と島原へ出かけなかったのですか?」
「はい。賑やかな席はちょっと、苦手なので……」
「だから、私と千鶴は二人で屯所にいることにしたんです」
「……成る程」

山南さんは得心がいって頷くと、深い色の瞳をこちらへと向けてくる。
その目に何故かどこか危うさを孕んでいる気がして、私は少しだけ眉を寄せた。

「……山南さん?」
「君たちは、どう思っていますか?例の【薬】ーー変若水のことを」
「え……?」
「どう、って……」

山南さんは微笑んでいた。
だがその微笑みにも、どこか危うさが孕んでいて、私は少しだけ息を飲む。
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