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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


そして斎藤さんは、お千ちゃんの様子に引っ掛かりを覚えたのか、暫く思案顔をしていた。

「……予定からだいぶ遅れてしまった。そろそろ行くことにするか」
「あっ、はい!」
「はい!」

お千ちゃんの事が気になりながらも、私たちは暑い風が肌を撫でる中、巡察を続けたのであった。


うだるような暑さが続いたある日の事。
私と千鶴の元に、相馬君と野村君が訪れて質問をしてきた。

「雪村先輩たち……お茶は、こんな感じでいいんでしょうか?」
「えっと……もう少しぬるい方がいいかも。ほら、今日は凄く暑い日でしょう?」
「それに、暑い日はぬるいお茶の方が飲みやすいからね。こういう時期は熱めのお茶は飲みにくいから」
「おお、なるほど……さすがです!」

夏が訪れる少し前に入隊し、近藤さんの見習い小姓となった相馬君は、よく私たちに小姓の仕事について聞いてくる事が多くなった。
私たちの方が小姓歴が長いということで、お手本にしたいらしい。

「んじゃ、水で薄めりゃいいんじゃないか?」
「でも、それじゃあ、お茶が薄くなるから……」
「そ、そうか……。なあ、相馬、どうすりゃいいんだ?」
「うーむ……井戸水で冷やしてみるのはどうだ?」
「お、そいつはいいな。やってみようぜ!」

もう一人の青年は野村利三郎君。
相馬君と同じく、近藤さんの見習い小姓となり、彼もまたよく私たちに質問をしてくる。
彼は新選組に憧れて入隊したらしい。

「お茶は、冷たくなくてもいいんです。少しぬるめくらいかな。だから、最初に暖かめのお湯を用意して、それでお茶を煎れてみて。そうすると、薄くならないでしょ?」
「あとは、お水で煎れるのもいいけど……これは時間がかかるから、直ぐにお出ししない時にやってみるといいよ」
「おおおーー!すげぇ、なるほどなあ。先輩小姓は伊達じゃないぜ!」
「本当に勉強になります」

そこまで感激されるような事は教えてない気がする……そう思いながらも、私と千鶴はお互いに顔を見合わせてから苦笑いを浮かべる。

「それじゃあ、お茶は私と千尋が煎れて持っていくので、二人は……」
「俺たちはなんですか?何でもやりますよ!」
「ええ、何でも言ってください!」
「よーーし!おまえらは、今から俺と剣術稽古だ!」
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