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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


すると、沖田さんは手を伸ばしてきて私の腕を掴んだ。
それも優しい力ではなく、振り解けないような力強い力でた。

「お、沖田さん!?」
「こうやって、僕が少し力を込めただけで振り解けないような君がちゃんと千鶴ちゃんを守れるのかな?」
「な……!」

振りほどこうとするけれども、沖田さんの手は離れることがない。
それどころか、彼は徐々に力を込めてきて、彼の指が腕にくい込んでくる。

(取れない……!)

咄嗟に沖田さんの顔を見れば、彼はにっこにと笑ったまま。
私はそんな彼に困惑しながらも、手を離そうと掴まれていない手で彼の手を掴んだ。

「分かった?君は、男相手だとか弱いんだよ」
「それは……」
「ちゃんとそれを理解しなよ」
「……はい。というか、なんで急にこんなことを?」
「うん?君の、千鶴ちゃんは守るけど自分自身はどうでもいいって感じが気に入らないから」

その言葉に、私は唖然とした。

「自己犠牲的なの、僕好きじゃないんだよね」
「別に自己犠牲的では……」
「無自覚?それはそれで好きじゃないなあ」

そう話した時だった。

「うっ……げほっ、ごほっ!!げほっ」
「沖田さん!?」

突然、沖田さんが咳き込み始めた。
そして、彼が労咳を患っていることを私は思い出してすぐに彼の元に駆け寄る。

「沖田さん、大丈夫ですか!?」
「別に、ちょっと咳き込んだだけだから……そんなに慌てなくても平気だよ」

沖田さんは荒く息を吐き出しながら、私の方へと視線を向ける。

「ねえ、前に言ったことを覚えてる?」
「え?」
「労咳のこと、誰かに話したら斬るって話。覚えてるよね?」

それは、【誰にも労咳のことを喋っていないよね?】という確認だとすぐに分かった。

「……誰にも言ってません。言わないと、沖田さんと約束しましたから」
「うん、いい子だね千尋ちゃん。ちゃんと約束を守る子は好きだよ」

そんな言葉、ちっとも嬉しくない。

「さてと、土方さん達はどうなってるかなあ」



しばらくして、千鶴と土方さん達が戻ってこられた。
無事に坂本さんは薩摩藩邸に逃げ込んだらしくて、見廻組や伏見奉行所のお役人には捕まらなかったらしい。

だけど一つだけ気がかりがある。
戻ってきたら千鶴の様子が、なんとなくおかしいのだ。

「千鶴……何かあった?」
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