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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


「大丈夫かな……」

夜になり、私は中庭に出ながらそわそわとしていた。
今頃千鶴や土方さん達は寺田屋に着いている頃かもしれない。
千鶴は危険な目には合っていないだろうか……とどうしてもそわそわしてしまう。

「土方さんは大丈夫って言ってたけれど……」

どうにも落ち着かない。

「なあに、そわそわしてるの?千尋ちゃん」
「きゃ!?」

そわそわとしていれば、突然声をかけられて悲鳴をあげながら身体を跳ねさせた。
振り返れば、会津藩の元に近藤さんと出かけられたはずの沖田さんがいる。

「お、沖田さん……お帰りになってたんですね」
「うん。で、君は千鶴ちゃんが気になるのかな?」

にんまりと笑う沖田さんに私は小さく頷いた。

「まあ、土方さんや新八さんに一君達がいるんだから大丈夫だと思うけどね」
「……そうだと、いいんですが」

本当は近くにいたい。
あの子を守るのが私の役目なのに……そう思いながら、手をもぞもぞと動かしていれば、沖田さんは私の顔を突然覗き込んできた。

「っ……!?」
「千尋ちゃんってさ、どうしてそこまで千鶴ちゃんに対して過保護なの?」
「え?」
「異常な位に千鶴ちゃんに近づく相手には警戒して、威嚇して、そして守ろうとする。ねえ、何で?」

私を探ろうとする目。
その目に私は思わず後退りながら、彼から目を逸らした。

「……言われてるんです。千鶴に仇なす者から守るように、何時以下なる時も側にいて、命を懸けて、命を捨てる覚悟を持って守れと……幼い頃から」
「……ふうん?命を捨てる覚悟を持って、ねえ。だから一君から稽古受けてるの?」
「そうですね……千鶴を守る為に」
「君は?自分自身を守ろうとは思わないの?」

沖田さんの言葉に、私はぱちりと瞬きをした。

「君はさ、確かにそれなりに剣術はあると思うよ。でも、所詮はただ女の子。もしの時に、自分の身も守れるかどうか分からないような女の子だよ」
「それは……。それは分かっています。だから、斎藤さんから剣術を学んでいるんです」
「ちゃんと自覚してる?」
「してはいます……」
「本当にしてるのかなあ?いざって時、千鶴ちゃんを守ろうとして自分の身も守れずに斬り捨てられたら、意味がないって」

沖田さんの目は意地悪そうに歪んでいる。
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