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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


「え!?」

私の問いに、千鶴は突然顔を真っ赤に染めた。
その反応に私は目を見開かせてから、彼女の方を掴んだ。

「その反応、何かあったんだね!?まさか、坂本さんに何かされたの!?」
「ちが、何も……えっと、何もなかったから!」
「嘘でしょ!!千鶴、嘘が下手なんだから隠してもわかるんだからね!」
「本当になんでもないからあ!!」


それから一月程経ち、春の花の香りが風に乗って運ばれてくるようになった頃のこと。
千鶴と共に境内の掃き掃除をしているときだった。

「中岡さん!どうしてここに……」

千鶴の声が聞こえたのと同時に、聞き覚えのある名前が聞こえて私はすぐに千鶴の元にへと駆け寄った。
するとそこには、坂本さんと一緒に行動をしている中岡慎太郎さんの姿があった。

「貴方は……!」

私は咄嗟に千鶴の前に飛び出すと、中岡さんは小さく息を吐いた。

「そう警戒しなくていい。別に、変なことをしようとここにきたわけじゃない。あと……声を出すな。新選組の奴らに見つかると、面倒なことになる」
「あ……」

中岡さんは新選組を警戒しているのか、普段の土佐弁ではなかった。
やがて彼は、懐から一通の文を取り出してから千鶴へと差し出す。

「坂本からの手紙だ。どうしてもおまえに届けてほしいということでな」
「坂本さんの……!?彼は、どうしてるんですか?怪我は……もう元気なんですか?」

そういえば、千鶴が坂本さんが見廻組から逃げる時に負傷したいたと言っていた。
千鶴は坂本さんの怪我をかなり気にかけていたから、どうなっているのか心配なのだろう。

「元気が有り余っていて、大変らしい。詳しいことは、その手紙に書いてある筈だ。……手紙ならば、飛脚にでも頼めと言ったんだがな。どうしてもおまえに直接渡してほしいと言って聞かないんだ。怪我人という立場を笠に着て……」
「そうだったんですか……」

本当に怪我をしたのだろうか……と私は眉を寄せた。

「それでは、俺は失礼させてもらう。確かに渡したからな」
「はい、ありがとうございます。坂本さんに、よろしくお伝えください」

本当にただ手紙を千鶴に渡しに来ただけのようで、なかさんは踵を返すと足早に去ってしまった。
特に警戒する必要はなかったのかもしれない……そう思っていれば、隣で千鶴は早速文の内容を確かめている。
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