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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


千鶴が尋れば、二人は何故か気まずそうに顔を見合わせていた。

(どうしたんだろう……。平助君と永倉さんのこの反応……千鶴や私には聞かせにくい話なのかな?)

やがて永倉さんが、慎重に口を開いた。

「……坂本龍馬が、京に現れたらしいんだ」
「坂本さんが?」

坂本さんなら千鶴から、勝先生という方の意向で薩摩に行っていると聞いたけれどと思い出す。

「何でも、船を使ってあちこちの藩と商売をしたり、外国から武器を買い入れたりしてるらしいんだが……薩摩や長州の奴らとも頻繁に連絡を取り合ってるて聞くぜ。……きなくせえよな」
「そんな、まさかーー」
「長州は朝敵とされているのに……?」

長州は幕府だけからではなく、朝廷からも朝敵と見なされているというのに……と私は眉を寄せた。

「千鶴と千尋の知り合いだし、あんまり悪く言いたくねえけど……坂本って奴、あっちに付いたりこっちに付いたりして、本音が見えなくて信用できねえよな」
「いや、ある意味わかりやすいだろ。金儲けさせてくれる相手は誰でも味方、ってところじゃねえか」
「なるほど……」

私もあまり坂本さんに良い印象は持っていない。
何となく、きな臭い感じの人っていうのもあるけれど胡散臭い感じがして……。
でも千鶴はそうじゃないらしい。

前に千鶴は【坂本さんは皆が言うほど悪い人には思えない】と話していたことがある。
その言葉に私は何とも言えなかったけれど……と考えている時だった。

「雪村君たち、ここにいたのか。ちょっと、一緒に来てくれるかい」
「井上さん?」
「どうしたんですか?」
「何でも、坂本の行方がわかったらしい」

井上さんの言葉に、千鶴は目の色を変えた。

「坂本さんのーー!?わかりました、すぐ行きます!」

井上さんと千鶴と共に広間へやってくると、そこには既に、幹部隊士の方々が全員揃っていた。

「雪村君たち、仕事の途中で呼び出してしまって、すまないな。そこに座ってくれ」

近藤さんの言葉に、私と千鶴は頷いてから指し示された所に腰を下ろす。

「で、一体何の用事なんだ?坂本の行方がわかったとか言ってたが」
「ああ。何でも京に戻ってきてるらしい。……あいつ一人だけじゃなく、薩摩や長州の舵取りをしつる奴らと一緒にな」

土方さんの言葉に私は眉間に皺を寄せた。
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