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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


近藤さんは、二人の顔を交互に見ながら話せば二人は口を噤んだ。

「この話は後日改めて……ということにしないか?」
「……そうだな、わかった」
「……。近藤さんがそう仰るのであれば」

二人はこれでは埒が明かないと思ったのだろう。
松本先生はため息を吐いて、山南さんは諦めたように口の端に笑みを浮かべる。
そして、山南さんは軽く頭を下げると、ふらりとそのまま立ち去ってしまった。

彼の背中を見送ると、近藤さんは話題を変えるために松本先生へと向き直ると言葉をかけた。

「そういえば先生、健康診断の方はどうでしたかな」
「ああ、それなんだがなあ。頭を抱えたよ」
「えっ?それは一体なぜ……」
「なぜも何も、怪我人や病人を合計したら、全隊士の三分の一近くになるんじゃないか」
「……え!?」
「全隊士の、三分の一!?」

松本先生の言葉に、私と千鶴もそうだが、近藤さんも目を見張って驚いていた。

「なんと!」
「なんとじゃないぞ、近藤さん。あんたらは今まで何をやってたんだ。切り傷から渋り腹まで……この屯所は病の見本市だぞ」
「面目ない。まさか、そんなことになっていたとは……」

新選組にお世話になりだしてから、よく隊士さん達が体調を崩している話は耳にしていた。
そして、原田さんたちから【医者の娘だから】ということで、よくどう対処をすれば良いかと聞かれた事があり、知っている対処を教えたことがある。

だけど、まさか全隊士の三分の一も怪我人と病人がいただなんて……。
私と千鶴は驚きが隠せなかった。

「まずは病室を用意して、そこに病人を運び込んでくれ。それから、屯所を清潔にしてもらわんと話にならん」
「承知しました。すぐに取りかかります!」

その後、近藤さんは隊士の方々を広間に集めてから、全員に大掃除に取り掛かるように指示を下した。

「ったく、何なんだよ大掃除って。俺は掃除とか整理整頓が、この世で一番嫌いなのによ…」
「ぐちゃぐちゃ言ってないで、さっさとそこの箪笥を持ち上げてくれって。散々自慢してた体力を披露する、いい機会じゃねえか」
「うわあああ!ネズミが出た!」
「落ち着け、大事はない。……どうやら、そこにある握り飯を餌にしていたようだな」
「本当だ!誰だよ、食い残しの握り飯をこんな所に隠してた奴!」
「……まったく、なぜ私がこのような雑用に駆り出されなければならんのだ」
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