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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


本当は辛い思いをしているはず。
だけど、拒めなのいは薬の研究は幕府の命令だから。
近藤さんや新選組には、断る選択や権利なんて到底なかったに違いない。

重い沈黙に包まれる。
誰も、一言も言葉を発せない状況が続いてい時だった。

「たとえ、将軍公の御典医を務めておられる方のお言葉といえど……。隊士でもない方に、口を差し挟まれる筋合いはありません」
「山南さん!」
「山南さん!?今、まだお昼なのに……!」

私たちの元に来たのは、顔色がまるで死人のように青ざめている山南さんだった。
時間帯はまだ昼頃であり、本来なら山南さんは外に出るのが辛いはず。

「あの、起きていて大丈夫なんですか?」
「まだ……太陽の日差しがあるのに……大丈夫なのですか?」
「山南君、休んでいた方がいいのではないか。顔色が悪いぞ?」
「……ご心配なく」

山南さんはそう言うが、心配してしまう程に彼の顔色は悪かった。
だが、山南はんは暗い表情のままで会釈をし、私たちの心配を受け流してしまう。

そして、山南さんは松本先生へと鋭い眼差しを向けていた。
まるで、敵対している者へと向けるような眼差しだ。

「我々は我々の裁量で、例の【薬】を有効に活用させて頂いています」
「しかし、危険だ。あの薬は人が扱えるような代物じゃない」
「研究は続いています。そして、この私という成功例もあります」

確かに、山南さんの言う通りだ。
彼自身があの薬の成功例であり、【薬】を使って必ず狂うというわけではないと、身をもって証明した。

「一見、平気そうに見えるかもしれんが……身体のどこかに相当無理をかけていることも考えられるぞ?」
「私は、至って健康ですよ。今後も研究と改良を重ねれば、薬の質も上がるのは明白です」
「……その為に、さらに多くの隊士を犠牲にするつもりかね?成功するかどうかもわからん実験に隊士を付き合わせるのは、生命を冒涜しているとしか思えんが」

松本先生も山南さんも、お互いが厳しい表情をして鋭い眼差しを向けあっていた。

「彼らは我々の礎となったのです。無駄死にではありません」
「しかしだなーー」

そんな彼らを止めたのは、先程まで静かに聞いていた近藤さんだった。
流石に止めなければと思ったのか、二人の間に割って入って落ち着かせる。

「…まあまあ。松本先生も山南君も、落ち着いて」
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