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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


「そうじゃなくてよ!もっと他に見るところがあんだろ!鍛え抜かれた鋼のようなこの筋肉とか!仁王像みたいに屈強そうな体型とか!」
「診察は診てもらうものであって、見せつけるものではない。さっさとどけ」

永倉さん達のやり取りを見ていれば、千鶴は勢いよく私の手を剥ぎ取った。
そして、中の光景を見てから唖然としている。

「見ない方がよかったと思うけど……」
「うん……でも、確かに伊東さんがこの場に馴染んでるところは想像できないかも」
「そうだね……」

伊東さんが最も嫌いそうな光景。
あんなに嫌がっていたのも納得すると思いながらも、私と千鶴は苦笑いを浮かべた。

その後、私と千鶴は松本先生に声をかけようと待っていた。
だけど、思った以上に皆さんの診察が長引いていて、廊下で松本先生の診察が終わるのを待つ。

「なかなか、終わらないね……」
「うん。でも強引に割って入るのも失礼だし……」

どうするべきかと悩んでいれば、私たちに声をかけてきた人がいた。

「雪村君たち、こんなところでどうかしたのか?」
「山崎さん……」
「あ、山崎さん……あの……松本先生がいらしていると聞いたので」

千鶴のその一言だけで、山崎さんはどうやらおおよその事は理解したみたい。
松本先生へと視線を向けてから、小さく頷いた。

「ふむ……なるほど。松本先生に何か話があるようだな。君たちの事はある程度聞いている。事情はおおよそ分かった。だが、診察がなかなか終わらないようだ。……俺に任せてくれるか?」
「いいんですか……ではお願いします」
「お願いします」
「わかった、少し待っていてくれ」

山崎さんは広間へと入ると、松本先生の側へと向かった。

「松本先生、軽い症状の者なら俺が代わりに診ます。そろそろ休憩にしてはどうですか」
「ふむ……では、そうさせてもらおうか」

山崎さんの計らいで、松本先生はゆっくりと歩き出して部屋の外に出てきた。
そして、私たちは慌てて松本先生の元へと駆け寄り、声をかける。

「あ、あの…!」
「あの、松本先生!」
「ん……?」

松本先生は、呼び止めた私たちの方へと振り向いた。
そして、私たちの姿をまじまじと見つめてから、すっと目を細める。
すると小さく松本先生は微笑んだ。

「……薬の補充も兼ねて休憩にしようか。君たち、ちょっと手伝ってくれるかね」
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