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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


ー慶応元年・閏五月末ー

暖かい風が吹きだしている五月末。
その日、新選組の屯所は何時にもなく騒がしい雰囲気に包まれていた。

先程から隊士の方々とよくすれ違ったり、隊士の方々の様子が忙しない気がする。
私と千鶴は中庭の掃除を終えた後、そんな彼らを見ながら廊下を歩いていた。

「……何かあったのかな?」
「忙しないよね……」

二人で忙しない隊士の方々を見ていれば、前から慌ただしく駆け足でやって来る人がいた。

「はあ……はあ……はあ……!じょ、冗談じゃありませんよ!まったく!」
「伊東さん?どうなさったんですか!?」
「なんだか、慌てていらっしゃいますが、何かあったのですか!?」

慌ただしく駆け足でやってきたのは、不機嫌そうに顔を歪ませる伊東さん。
私と千鶴は、あまりにも伊東さんが慌ただしくしているので驚きながら聞けば、伊東さんは不機嫌たっぷりな声色で声を荒らげた。

「どうしたもこうしたもありませんよ!私がなんであんな野蛮人どもと同じ部屋で、肌をさらさなくてはならないの!」
「……肌をさらす?」

伊東さんは何時も説明するときは、要領を得た説明だが、今はその要領は何処にもない状態。

「あの……、何かあったんですか?」

千鶴が質問すれば、伊東さんは気を取り直しながら、乱れた髪を整えて不機嫌そうに答える。

「将軍上洛のときに近藤さんと意気投合したお医者様が、屯所にいらしてるのよ。隊士たちの健康診断を行うとかの名目で」
「健康診断…だから皆さん、忙しなくされていたんですね」

伊東さんはおぞましいものを見るような目で、今来た曲がり角の向こうを睨んでいた。
そういえば、土方さんが今日は健康診断で、隊士の方々を集めると話していたのを思い出す。

健康診断は基本的に上半身を裸にする。
だからなのか、私と千鶴の事情を知っている幹部の方々は【近寄るなよ】と言っていた。

「あのハゲ坊主ーーじゃなくて、お医者様ったら!皆の前で、私に着物を脱げと仰るのよ!!拒んだら無理やり脱がせようとするし。それに、あの隊士たちの態度!まるで野獣みたいでしたわ!」

珍しく声を荒らげる伊東さんに、思わず目を見開かせながら驚いてしまう。
だけど、健康診断は肌になるのが基本だが……と思いながら苦笑を浮かべた。

「そのお医者は、なんというお名前の方ですか?」
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