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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


坂本さんは眉間に皺を寄せながらも、堂々とした口調で皆さん方にそう言い放つ。

「土佐勤王党の連中とは知り合いやけんど、それだけよ。俺はあいつらがやりゆうことを、えいと思おちゃあせんき」
「……そんな言葉、信用できると思ってんのか?」
「信用できんもなにも、それが真実よぉ。何なら、勝先生に直接確かめてもろうてもかまん」
「勝だと……?」

坂本さんの口から出た名前に、土方さんが訝しげに眉をすがめる。

「勝っていやあ、幕府の役人だよな?ってことは……」

幕府と繋がりがある坂本さんは、敵では無いということに気がついて場の雰囲気が緩みかけた。
だけど土方さんはそうじゃない。

「おまえ、あの晩池田屋にいた土佐浪人と昵懇だったんだろ?それで尊攘過激派とは無関係だと抜かすのか」

土方さんのその言葉を聞いて、坂本さんの目元が曇る。

「……俺は、止めたがやけんど。あいつら、ろくに話も聞かんと突っ走って死んでしもおた。今の日本でホンマに攘夷ができるか、ちっくと考えたらわかるろうに……」
「何を訳のわからねえこと言ってやがる。攘夷に関しては、朝廷も幕府も意見が一致してるじゃねえか」
「ワケが分からんがはとっちぜ……そもそも外国に港を開いたがは誰で?幕府やないがか。口先じゃあ攘夷攘夷ちゆうけんど、本気でやる気がないがは、見たらわかるろう」
「そりゃ、あくまで一時的なもんだ。奴らの黒船にはかなわねえから、力を蓄える為に時間稼ぎしてるんだろうが」
「その、力を蓄える言うがは、誰の力のことぜよ?日本か?それとも徳川家か?」
「……両方に決まってるだろうが。徳川家は、日本を治める大権を戴いているんだからよ」

彼らの言葉に私と千鶴は困惑していく。
すると坂本さんは、土方さんの言葉に軽く息をついた。

「長州藩が四カ国連合艦隊に攻撃されたとき、何の手助けもせんと見殺しにしたのにかえ?」
「そりゃ、長州の奴らが後先考えず、黒船に大砲撃ちかけたりするからだろうが」
「けんど、攘夷自体は幕府の命令じゃ。たとえ単なるお題目に過ぎんかったとしても。なにより、どれだけ目障りやってと、長州藩士らぁも同じ日本人ということには変わりないき」

土方さんが苦い顔をするのと対照的に、坂本さんは口角を引き上げて笑みを作っていた。
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