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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


私は沖田さんの元に、千鶴は平助君の元に向かうことにした。



「……あれ、千尋ちゃん?」

私が広間に入ると、沖田さんは刀の手入れをしている最中で、私を見ると少しだけ驚いたような表情を浮かべていた。

「二条城に行ってるんじゃなかったけ?どうしたの、一人で」
「えっと……」
「あ、わかった。さては、何か失敗して土方さんに追い返されたんでしょ?」
「え?あ、えっと……多分、似たようなものだと……」
「……あのさ、そんな引きつった顔で返事されても、全然からかい甲斐がないんだけど」
「か、からかおうとしないでください!」

なんでこの人は隙あらば人をからかおうとするんだろうか。
そう思っていれば、沖田さんは笑うことも無く真剣な表情で私を見てきた。

「何があったのか、聞かせてくれるかな」
「はい……」

私は未だに落ち着かない心臓の鼓動を感じにらも、二条城で起きたことを沖田さんに打ち明けた。
そして、風間千景と思われる人物の名前を出した途端、沖田さんの目の色が変わった。

「……へえ、そうなの。風間千景……、あいつが来てたんだ?あいつらが来るってわかってれば、意地でも行ったんだけどなあ……」
「な!駄目ですよ!風邪引いてるんですし、土方さんに養生するように言われているじゃないですか」
「うるさいな、そもそも君が悪いんじゃない。君にもらった薬、全然効か……な……ごほっ、ごほっ……!」

その時だった。
沖田さんが苦しげに咳き込んだ時、彼の口から赤黒い物が零れた。

「沖田さん!?しっかりしてください!今、誰かを……平助君と千鶴を……」
「駄目だ!」

沖田さんの声が、私の耳朶を打つ。
口元に滴る血を手の甲で拭うと、沖田さんは私を睨みつけてきた。

前髪の狭間から覗くその瞳にな、尋常では無い殺気が込められている。

「今見たことは、忘れて。……大丈夫、ただ喉が傷ついただけだよ」

江戸にいた頃、千鶴と共に父様の手伝いをしていた時、咳き込みすぎて出血した患者さんを何度かは見たことがある。
だけど今のは……。

「あの、沖田さん……」
「……聞こえなかった?忘れろって言ったでしょ?」

沖田さんからは強い拒絶を感じた。

「……分かりました。誰にも言いません。だから、今日はもう布団に入ってゆっくりと、大人しくしていてください。お願いしますから……」
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