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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


千鶴の言葉に冷や汗が浮かぶ。
なんとかしなければ、この男たちから千鶴を引き離さなければならない。

この場に居続ければ、千鶴が【あの記憶】を思い出してしまうかもしれない。
それだけはどうしても避けたいと思っていれば、風間千景がゆっくりと口を開いた。

「……言っておくが、おまえらを連れて行くのに同意など要らぬ。女鬼は貴重だ。共に来いーー」

直ぐ目の前に風間千景が立っていた。
音もなく近付いて来たことに目を見張る。

私と千鶴を引きずりこむように、風間千景の手がゆっくりと伸びてきていた。
この手を千鶴に近付かせてはいけない……そう判断した私は刀を直ぐさま抜き取る。

「近付くな!」

そして、刀を風間千景に目掛けて横に振るが、意図も簡単に避けられてしまう。
すると、風間千景は愉快そうに微笑みを浮かべていた。

「ほう……。おまえは東の鬼を守る方の一族か?」

面白げに囁く風間千景は、またゆっくりと手を伸ばしてきた。
その瞬間である。

白刃が闇を切り裂いていた。

「おいおい、逢引ならもう少し、色気のある場所を選んだ方がいいんじゃねえか?」
「……またおまえたちか。田舎の犬は、目端だけは効くと見える」
「……それはこちらの台詞だ」
「原田さん!斎藤さん!」

私たちの目の前には、原田さんと斎藤さんの姿があった。
彼らの姿を見た途端、私は緊張の糸が切れたのか、それとも安堵したせいなのか、目眩がしてその場に崩れ落ちそうになる。

「千尋!」

崩れ落ちそうになれば、千鶴が私の名前を叫ぶ。
だが、崩れ落ちる前に私の肩を無骨な手が掴んでから支えると、後ろへと引いた。

「……下がってろ」
「……ひじかた、さん」

私を押しのけるように前に出たのは土方さんで、彼の手には既に刀が握られていた。
そんな彼を見ていれば、千鶴が駆け寄り私を支えてくれる。

「大丈夫!?」
「うん……ちょっと、安堵したら目眩が……」

千鶴が心配そうに顔を覗き込むので、安堵させる為に笑顔を浮かべた。
そして、土方さんの方へと視線を向ければ、彼は風間千景へと刀を向けている。

「……将軍の首でも取りに来たかと思えば、こんなガキ達に一体何の用だ?」
「将軍も貴様らも、今はどうでもいい。これは、我ら【鬼】の問題だ」
「【鬼】だと?」
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