第16章 暗闇の音【沖田総司編】
原田さんは私の伝達に頷いてから、組の方々に私が告げた伝達を伝えていた。
「では、私はこれで。引き続き頑張ってくださいね」
「おう。千尋も頑張れよ」
彼の言葉に頷いてから、頭を下げると私は千鶴と合流する為にまた走り出した。
走りながら、少しだけ千鶴の事が心配になる。
(……三木さんに変に絡まれてなければいいけど)
三木さんはたまにだけど、私と千鶴に絡む事があるから心配だった。
「兄弟揃って、厄介な人たちだなあ……」
失礼な事は言ってるのは理解しているけど、私は小さく呟きながら千鶴が居るはずの方へと走っていく。
その時、三木さんの九番隊が待機している前を通りがかると、三木さんに呼び止められた。
「なんだよ、兄弟揃って伝達か?小姓なのに、使いっ走りなんだな」
「三木さん、今はお仕事中なので私なんかに構わずに集中されたらどうですか?」
「おい、それは嫌味を言ってるつもりか?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ。では」
何故、兄弟揃って絡んでくるのだろう。
そう思いながら走っていれば、千鶴の後ろ姿を見つけた。
だが何か様子がおかしい……そう思いながら近寄れば殺気を感じる。
「……千鶴!」
名前を叫んで近寄れば、人目も届かない城の陰、篝火は遠く、月光のでも触れるぎりぎりの縁にある者たちがたたずんでいた。
「あなたたちは……!?」
「……千鶴!下がって!」
「千尋!?」
私はすかさず千鶴の前に立つと、刀へと手をかけて彼らへと視線を向けた。
「……気付いたか。さほど鈍いというわけでもないようだな」
特徴的な風体を持った三人の男たち。
その中の一人は、あの池田屋で沖田さんを倒した人もいた。
男たちの視線。
その視線はまるで、強弓で射抜かれるかのようなものであり、背中に汗が伝う。
三人の男たちを見て、私は直ぐに斎藤さんと原田さんに聞いた情報を記憶から手繰り寄せた。
髭をたくわえた男が天霧九寿。
そして、青みがかった黒髪の男が不知火匡。
そして最後に、あの時池田屋で沖田さんを倒したという男が、風間千景。
池田屋や禁門の変で新選組の前に立ち塞がった男たちが、何故ここにいるのか。
「何故、あなた方がここにいる」