第16章 暗闇の音【沖田総司編】
私の言葉に沖田さんは眉間に皺を寄せた。
「一体、何の勉強会さ」
「えっと、攘夷とか……今後の日本が向かっていくべき未来の勉強会と、言われていました」
「攘夷と、今後の日本が向かっていくべき未来ね……。胡散臭いことこの上ないね」
確かにちょっと胡散臭いかも。
そう思っていれば、沖田さんは少しだけ鋭い目付きをしながら伊東さんが消えた方に視線を向ける。
それから私の方へと視線を向けた。
「千尋ちゃん。伊東さんとは二人っきりにならないようにね。もし、変なことをもちかけられたら、僕にすぐに報告してね」
「あ、はい。分かりました」
「うん、いい子だね」
にっこりと微笑んだ沖田さんは、まるで子供扱いするかのように私の頭を撫でてきた。
「さてと、僕は子供たちと遊ぶ約束があるから行ってこようかな」
「あ、この間の子とは仲直りしたんですか?」
「うん、したよ。そうだ、千尋ちゃんも一緒に遊ぶ?」
「え?わ、私もですか?」
「うん。掃除ばっかりしないでさ、たまには遊ぼう」
そう言うと沖田さんは私が持っていた竹箒を取り上げて、私の腕を掴んで歩き出した。
「え、いや、でも、掃除が!」
「そんなのあとでいいの、あとで。ほら、行くよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!沖田さん!」
結局、私は掃除をさぼってから沖田さんと共に子供たちも遊ぶ事となったーー。
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徳川家康公の頃より、将軍上洛の際に宿舎の役割を果たすために建造された二条の城。
そして、この城には先程何事もなく、辿り着いた十四代将軍・徳川家茂公がおられる。
道中警護から、そのまま城周辺の警護をまわって一刻あまりが経っていた。
近藤さんと永倉さんに井上さんは、幕府のお偉い方々と城の中できっとご挨拶をされているだろう。
そう思いながら、私は駆け足で城の中を駆けていた。
「千鶴は、今九番組の方に伝達中かな……。私は、原田さん達の方に伝達しなきゃ」
私と千鶴は、隊士の方々に交代を告げたり、知らせを伝えたりする役割だ。
二人でそれぞれ、警護されている組へと伝達をしながら走り回っている最中である。
「原田さん、伝達です」
「お、千尋。ご苦労さん」
「原田さんもご苦労さまです。局長は城内での挨拶のため、皆さんは引き続き警護をお願いします」
「了解。伝達、確かに聞いたぜ」