第16章 暗闇の音【沖田総司編】
やはり、最近は伊東さんによく声をかけられることが増えた気がする。
掃除をしている時や、洗濯物をしている時などに伊東さんは姿を表しては私に声をかけていた。
「ちょっと、お聞きしたいことがあるの、貴方に」
「私にですか?」
「ええ。実はね、たまにだけど勉強会に開いているの。私と共に入隊してきた隊士や、他の隊士も集めてね」
「勉強会、ですか……?」
勉強会という言葉に首を傾げていれば、伊東さんは小さく頷く。
「攘夷についてや、今後の日本が向かっていくべき未来についての勉強会よ。よければ参加されないかしら?」
「……攘夷に、日本について」
私は正直、そういう事については詳しくはない。
だけどもそういう知識を身に付けるのも必要なのだろかと悩んでいれば、伊東さんは私の悩む姿を見て声を少し出して笑った。
「ふふ。もし、知識を付ければ土方君のお役にも立てるかもしれないわよ」
「……土方さんの、お役に」
確かに小姓であり、しかも京の治安を守る新選組にいるのなら知識は必要かもしれない。
だけども、小姓と言っても表向きがそうなだけだから本当に必要なのだろうか。
悩みに悩んでいた時だ。
「千尋ちゃん」
「え、あ、沖田さん」
慌てて振り返れば、そこには沖田さんの姿があった。
彼は何処か面倒くさそうな目をしながらも、こちらへと近付くと、私と伊東さんの間に立つ。
「伊東さん。この子に何か御用ですか?」
「……少し、お話をしていただけですわ」
「へえ?どんな話をしていたのか、気になりますね」
「二人だけの秘密ですよ、ふふ」
伊東さんの微笑みに、沖田さんが瞳を細くさせる。
二人の間には少しだけぴりついた空気が流れ、私は沖田さんと伊東さんを交互に見た。
すると、伊東さんはにっこりと微笑みを深くさせてから私たちに背を向けてからこちら側を振り向く。
「では、私はこれで失礼。千尋君、少しでも興味があれば、いつでも声をかけたくださいね」
「は、はい……」
「それでは、ごきげんよう」
伊東さんはそう言うと、ゆっくりと歩き出した。
そして伊東さんの姿が完全に見えなくなった時、沖田さんが私の方へと視線を向けてきた。
「千尋ちゃん。伊東さんに何を言われたの?」
「え、あ……勉強会に参加しないかと誘われました」
「勉強会?」