第3章 巡察【共通物語】
薩摩や西国となると、彼は尊皇攘夷派の浪士なのだろうかと考える。
言葉使いは東国に近い感じはしたので、薩摩や西国の人には見えなかったけれども。
「何にせよ、気を許さぬ方がいいだろうな。昨年の京の治安を考えると、用心に用心を重ねておくに越したことはあるまい」
「……わかりました」
「はい……」
やっぱり悔しくてたまらず、落ち込んでしまう。
私はまだ千鶴を守るには力及ばない、あの人の目を見ても胡散臭いとしか思えなかった。
やはり斎藤さんは凄いなと思いながらも、とぼとぼと屯所へと続く道を歩く。
屯所について程なく。
千鶴は今日、炊事の当番なので勝手場へと急いで向かい、私は部屋に戻る為に廊下を歩いていた。
すると隣を歩いていた斎藤さんが声をかけてくる。
「どうした、雪村妹。落ち込んでいるようだが……どうも、その落ち込みは綱道さんの事については見えぬが」
「……近くにいたのに、あの人に隙が全くなかったのに気付けませんでした。これでは、千鶴をちゃんと守れない……」
「なるほど、それであんたは落ち込んでいたのか」
「……はい」
「剣術の稽古を続けていれば、相手に隙があるのか否か気付くようになるだろう。だから、あまり気に病むな」
斎藤さんはそう言ってくれたが、やはり私は落ち込んだ気分のままだった。
でも斎藤さんの言う通り、稽古を続けていれば分かるようになるかもしれないと前向きにも考えるようにした。
「今日の夜も、稽古を付けてやれる。少しずつ、強くなり相手の隙があるか否かを分かるようになればいい」
「……ありがとうございます、斎藤さん」
その夜、斎藤さんはまた稽古を付けてくれた。
丁寧に厳しく教えてくれて、そして相手の隙があるかどうかを見る為のコツなども教えてくれた。
でもまだ私には相手の隙があるかどうかを見抜く力はないようだ。
斎藤さんからは【慌てるな】と言われた。
でも、早く強くならないといけないと自分を追い込むようにまた、私は斎藤さんの稽古の後に一人で素振りをしていた。
「まだまだ……だなあ」
「何が、【まだまだ】なんだ」
「わっ!?」
突然、後ろから声をかけられて思わず体が飛び跳ねた。
慌てて振り向けば、廊下には土方さんが不機嫌そうな表情で立っている。
「こんな時間に起きてるんじゃねえ。さっさと寝ろ」
「す、すみません……」
「で、何が【まだまだ】なんだ」