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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第3章 巡察【共通物語】


「今の男は?」
「先程、声をかけてきた人です。才谷梅太郎という方らしいですけど……なんか、胡散臭い人でした」
「千尋、胡散臭いって……。あ、斎藤さんの方は、どうでしたか?父のこと、何か分かりましたか?」
「それについては帰る道すがら話すが……期待はせぬ方が良いとだけ言っておこう」

その言葉で、父様の手掛かりは得られなかったという事がわかった。
やはり簡単には手掛かりはつかめないようで、気持ちが一気に重く沈んでしまう。

また、人違いだったのだろうか。
そう思っていれば、斎藤さんは茶屋の方へと足を向けながら声をかけてきた。

「待っていてくれ。今、あんた達の分の勘定を済ませてくる」
「……はい、わかりました」
「ありがとうございます、斎藤さん」

その後、屯所へと戻る最中に斎藤さんが話してくれたが寺田屋に出入りしているという蘭方医はやはり父様ではなかったらしい。

「……すまぬな。わざわざあんた達に伏見まで同行してもらったというのに」
「いえ、そんな……気にしないでください」
「それに、良かったのかもしれません。父が、尊皇攘夷派との関わりがないというのが分かって」
「そうか……そうだな」

父様の手掛かりはなかったが、父様が尊皇攘夷派との関わりが無かったと知れて安堵はした。
でも、やはり父様の情報が得られなかったの事に酷く気分は沈んでしまう。

途方に暮れた気分で歩いていれば、斎藤さんは何かを思い出したかのような表情をすると、私と千鶴に問いかけた。

「そういえば……先程、あんた達と話していた男のことだが」
「才谷さんのことですか?」
「……妙な男だったな。一見人好きなように見てたが、立ち振る舞いには隙が全くなかった」
「えっ……」
「何だか、胡散臭いとは思っていましたが……」

胡散臭いということだけは思っていた。
でも、立ち振る舞いに隙がなかった事に気付けなかった事に驚いたのと同時に、悔しさが込み上げてくる。

人の立ち振る舞いや隙があるかどうか分からなければ、千鶴の事を守ることは出来ない。
そのことに酷く落ち込んでしまった。

「斎藤さんは、何かお気付きに?」
「……剣の心得がある者は、目を見ればわかる。恐らく、脱藩浪人の類だろう。この辺りで寝泊まりしているとすれば、薩摩や西国にゆかりがある者かもしれぬ」
「脱藩浪人……」
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