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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第3章 巡察【共通物語】


土方さんの問に、私は顔を下に下げながら今日あったことを話した。
すると土方さんは小さくため息を吐く。

「まぁ、お前が悔しいと思う気持ちも分からなくはねえが……あまり自分を追い詰めるんじゃねえ」
「はい……」
「それに、無理に稽古してると体を壊すぞ」

そう言いながら土方さんは私に手招きをするので、なんだろうと思いながら近付く。
すると土方さんは草履を吐くと縁台から降りてきて、私の手首を掴む。

「手、赤くなってるぞ」
「わっ…本当だ……」
「怪我する前に辞めとけ。急いだって直ぐに強くなったり、相手の隙を見抜ける訳じゃねえ。それに、無理して体壊せば姉を守れなくなって本末転倒だぞ」

土方さんの言い分はもっともだ。
無理をすれば体を壊して千鶴を守れない、それじゃ意味が無い。
何でそのことに気付かなかったのだろうと、また気分が落ち込んでいく。

早く強くなりたい。
でも、無理をすれば千鶴を守れない……それがどうしても歯痒く感じてしまう。
すると土方さんがまたため息を吐く音が聞こえた。

「警戒心が強くて気が強いくせに、直ぐに落ち込むんだな。お前は」
「う……」
「斎藤が言ってたぞ。少しづつだが、お前が強くなっていて教えがいがあるってな。だから慌てるんじゃねえ」
「え……」
「……分かったら、早く寝ろ。他の隊士に見つかったら面倒だろうが」
「あ、はい!すみません、直ぐに戻ります!」

木刀を持って直ぐに縁台へと上がれば、土方さんも縁台へと上がる。
そして土方さんへと頭を下げて部屋に戻ろうとした時であった。

「おい、雪村。ちょっと待て」
「はい?なんでしょう」
「手、出せ」

ぶっきらぼうな言い方な土方さんを見ながらも、両手を差し出せば手の上に貝殻が置かれた。

「これは……」
「軟膏だ。まだあるのに間違えて買っちまったから、お前にやる」
「え、いいんですか?」
「良いからやったんだ。早く部屋に戻って寝ろ!」

そう言うと土方さんは私に背を向けて歩き出してしまう。
手の上に置かれた軟膏を見てから、また土方さんの背中を見て、つい笑が零れた。

最初は怖い人だと思っていた。
でも、本当はとても優しい人なんだと思いながら歩いていく背中へと私は頭を下げたのであった。
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