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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第16章 暗闇の音【沖田総司編】


遭遇したのが沖田さんで良かったかもしれない。
そう思っていれば、千鶴は【あれ?】という声を漏らした。

「どうしたの、千鶴」
「そういえば……沖田さん、こんな夜中に何をしてたんだろう?」
「確かに……まるで、八木邸から出て行く人を待ち構えていたような……」

どうして居たのだろう。
そう思いながら私たちは八木邸の方へと戻ったが、夜を迎えている八木邸は静まり返っていた。

私と千鶴は成る可く音が鳴らないようにと、足音を殺しながら廊下を進む。
その時だった。

「……あれ?」
「今、誰かが広間に入っていった……?」

私と千鶴はお互いの顔を見合わせた。
誰かに見咎められるのは厄介だから、人と会わないに越したことはないけど、妙な胸騒ぎがする。

「……誰が入ったかちょっと、確かめてくる」
「あ、私も行く」

音を立てないようにしながら、こっそりと広間を覗き込むとそこには山南さんの姿があった。

(山南さん……?)

一人佇む山南さんを見て、妙にただならぬ予感に襲われた。
こんな夜中に山南さんなこんなところで何をしているのだろうか……。

声をかけるべきかどうが。
そう悩んでいる時だった。

「まさか君たちに見つかるとはね。正直、予想していませんでしたよ」
「っ……!?」

山南さんは、私たちをしっかりと見据えながら呟いた。

「雪村君たち、そこにいるのでしょう?出てきなさい」

勘づかれていたようだ。
私と千鶴は顔を見合わせてから、障子を開けて山南さんの前に姿を現した。

「すみません。様子を窺うような真似をしてしまって……」

千鶴が謝罪の言葉を述べると、山南さんは笑みを浮かべる。

「別に、叱るつもりはありませんよ。夜中に怪しい人影を見かけたら、気にかかるのは当然でしょうしね」

山南さんの態度に、何か違和感を感じる。
まるで、全ての悩みが解決したような、そんな爽やかな笑みを浮かべていた。
彼が腕を怪我をしてからは見たことがなかった表情。

「山南さん。何か、いい事でもあったのですか?」

私の問いに山南さんは微笑みを深くさせる。

「ええ、ありましたよ。……というより、ようやく決心できた、と言うべきでしょうか」
「決心……?」

ふと、彼の手元で何かが揺れたのに気がつく。

「山南さん、それは……?」
「二人とも、これが気になりますか?」
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