第15章 戦火の行方【沖田総司編】

随分と長い時間上げたままなので、私は思わず首を傾げた。

「……あのさ総司。そろそろ、そいつ下ろしていいよ」
「遠慮しないでいいよ。たかいたかいしてもらうの、僕も昔は好きだったしさ」

何かをさっしたのか、抱えあげられた男の子の顔が段々と恐怖で歪んでいく。

「う……うわああんっ！」
「あっはっは。泣くほど喜ばなくてもいいのに」

そう言う沖田さんの声は、寒気がしてしまうほどに冷たい。
よく見ると沖田さんの目は少しも笑っていなかった。

「下ろしてー！！」

男の子の悲鳴をきいて、私はハッと我に返った。

「お、沖田さん！駄目ですよ！？相手は子供ですから！」
「やだなあ、千尋ちゃん。僕は遊んであげてるだけだよ」
「遊んでいるようには見えませんから！」
「ごめん、ごめんってば！！」
「君もどうして謝るのさ。遊んでもらったときは、普通、【ありがとう】だよね？」
「沖田さん！その笑顔も声も、ものすごく怖いですから！！」

私は慌てながら沖田さんを止めようとするが、彼は冷たい目のまま子供を抱き上げたまま。

「ゆ、許してよ総司！俺たちが悪かった！」
「し、新選組の悪口なんて、もう言わないよー！だから許してー！！」

やがて沖田さんはまるでしぶしぶといった感じで、男の子を解放してあげた。
私は泣きじゃくってしまっている子供をなんと慰めてから、青い顔で怯えている他の子達と一緒に、家へ帰ってもらった。

「……沖田さん。あの子たちとはお友達じゃないんですか？それなのにあんなことしては、駄目じゃないですか」
「だって……だってあの子、近藤さんを馬鹿にしたし。何も知らないくせにさ。あんなこと言う資格ないよ」
「沖田さん……」

土方さんのたちの悪口は大丈夫でも、近藤さんはどうやら駄目らしい。
彼の言葉で、沖田さんがどれだけ近藤さんが好きなのかはちょっと分かったかもしれない。
そう思って小さく笑ってしまった。

「千尋ちゃん……なんで笑うの？」
「いえ……。近藤さんって本当に素敵な人ですものね」
「うん！」

沖田さんは今度こそ素直な笑顔を浮かべて頷いた。

「だから君が怒ってくれたの、結構嬉しかったよ」
「……それは……」

沖田さんのその表情が不思議と新鮮なものだから、私はちょっとだけ動揺してしまう。