第15章 戦火の行方【沖田総司編】
「少しも怖くないなんて、言えないですけど…」
返す言葉も見つからないなか、悩み続けていればとある一人の姿が思い浮かんだ。
「そ、そうだ!新選組の局長の近藤さんは、とても親切で優しいよ!」
情に厚い彼なら、どこに出してもどこから見られても【いい人】なはず。
私も千鶴も彼にはとても親切にしてもらっているし、優しくもしてもらっている。
近藤さんは優しい。
そう力説した私の事を、子供たちは冷めた目で見てくる。
「確か局長ってさあ、すっごい鈍そうな奴だろ?」
「え、え……?」
「うん。にこにこしながら、散歩してるの見たけどさ、なんか頼りない感じ。めちゃくちゃ弱そう」
「他の奴らのほうが、まだまともっぽそう」
「そ、そんな事はないよ!近藤さんはとても頼りになる人だよ!」
だけど、近藤さんって子供たちからしたらそんなふうに見えるのだろうか……。
「あんなのが局長だから、新選組は駄目なんだって!」
「そんな事ありません。あまり、酷いこと言わないで」
子供たちのあまりの言いように、思わず声を荒らげてしまっていたら、沖田さんが笑顔で推し留めてきた。
「まあまあ、千尋ちゃん。君もちょっと落ち着こう?相手は子供なんだし、そんなに怒ることないよ」
「ですが――!」
「総司、そいつ無視して俺たちと遊ぼう」
「うん、そうだね」
「沖田さん……!」
新選組の隊士なら、子供たちの言葉を否定して欲しいところなんだけど。
そう思いながら、笑顔の子供に近寄る沖田さんを見た。
「君はどんな遊びがしたいの?【たかいたかい】とかどう?」
「それでいいよ。総司って背が高いしさ」
「うん。身長がこんなことで、役立つなんて面白いよね」
ふと、違和感を覚えた。
沖田さんの声が少しだけ低くなっているような気がしたのだ。
(あれ……?)
感情が籠っていないような……。
そう思っていれば、沖田さんは笑顔のまま男の子を抱き上げる。
「たかいたかーい!」
「わあっ!」
沖田さんの背よりも高く抱え上げられた子供は、とても嬉しそうな声を上げた。
そんな様子に溜息を零しながら、二人の様子を見守る。
「ほーら、楽しい?いつもと違うたかさって、それだけで面白いよね」
「うんっ!」
楽しそうなら良いかな。
そう思っていたが、沖田さんはいつまで経ってもたかいたかいを続けている。