第15章 戦火の行方【沖田総司編】
「俺から何も聞き出せなかったって言うと、咎めを受けることになるんだろう?」
「いえ、そんなことは……」
「咎めは別に……」
咎めを受けることはない。
そう言うとした時、こちらへと歩いてくる足音が聞こえてきた。
「おい才谷、誰と話ゆうがな?知り合いかえ?」
浪人風の男の人がこちらに歩いてきて、油断もない視線を私たちへと向けてくる。
訛りのある言葉はどこの言葉なのだろうかと思いながら、私は見を固くさせた。
「ああ、ちょっとした知り合いよ」
すると坂本さんは私たちに、その浪人風の人を紹介してくれた。
「こいつは中岡ゆうて……まあ、俺の相棒みたいなモンよ」
「ちょっと待てぇ。俺は石川やろうが?にゃあ、才谷」
「いや、俺はもう変名を明かしてもうちゅうき、おまんだけ伏せちょっても意味ないがよ」
「まったく……無関係の者たちに平然と本名を名乗るなんて、危機感がないがあにも程があるき」
中岡さん……という方は渋い顔をしていた。
「……中岡慎太郎だ」
「私は、雪村千鶴と申します。よろしくお願いします」
「雪村千尋と申します。よろしくお願いします」
名乗られたら名乗り返さなければ。
そう思い、私たちは名乗ってから頭を下げたけれど中岡さんは疑わしい目付きで私たちを睨んできた。
「おまんら……、女か」
「えっ?あの、それはーー」
やっぱり見抜かれた。
そう思いながら千鶴の前にさりげなく立っていれば、坂本さんが口添えをしてくれる。
「わけあって男の格好をしゆうらしい。まぁそこは目をつぶってちゃってや」
「……どんな訳かは知らんけど、この時世、男の格好で京をうろつくなんて、胡散臭いにゃあ」
私からしてみれば、とても坂本さんと才谷さんが胡散臭いと思える。
だけれど相手からしてみれば私達も胡散臭いのだからと思いながら返答を困ってしまう。
「と、坂本。人を待たせちょいてこんなことしゆう場合やないろう」
「お。そうやったにゃあ。ほんなら、ぼちぼち行くかえ。俺は、おまんらのことが気に入ったぜよ。じゃあにゃあ、千鶴、千尋。また会おう。元気でおれよ」
「あ……、坂本さんもお元気で!」
「また、何処かで」
「次に今京に来るがはいつになるかわからんけど……、そのときにでもまた会えるとえいにゃあ」
「はい。その時は是非」