第15章 戦火の行方【沖田総司編】
「千鶴、千尋!」
後ろから突然名前を呼ばれた。
聞き慣れない声に、眉を寄せながら千鶴を自分の背に隠すようにしながら振り返る。
「いや、まさかおまえ達にまた会えるとは思わなかったな。これも運命ってやつか?」
「あ……!」
「相変わらず、千尋は警戒心が強いなあ。俺のことは、覚えてくれてるよな?寺田屋で、親父さんを一緒に捜したーー」
「はい、よく覚えています。才谷さん」
「……忘れていませんよ」
私は警戒しながらも無意識に刀に手が伸びいてた腕を止めて、下へと下げた。
「あの時は付き合って下さって、ありがとうございました」
千鶴がお礼を言うと、才谷さんは白い歯を見せながら笑って見せる。
「いやいや、結局見つけてやれなかったからな。あの後、どうだったんだ?親父さん、見つかったのか」
「それが、まだ……」
千鶴の言葉に、才谷さんは気の毒そうに顔を曇らせる。
同情しているのかと思いながら、その表情に気分が悪くなっていく。
同情されるのは昔から嫌いだから、つい嫌になる。
(昔から嫌いなんだよね……同情されるのって)
そう思いながら、未だに警戒するように才谷さんへと視線を向けた。
「……そっか。ま、まだ見つからないって決まったわけじゃねえだろうし、大変な時こそ明るく行こうぜ。ってとこで、これからどこかで美味い物でも食わねえか?」
「結構です」
私は千鶴の一歩前に出てからそうはっきりと答えた。
「相変わらず、警戒されてるなあ。怪しい男じゃないぞ?」
「会ってそこそこなのに、なんで警戒されないと思っているんですか」
「うーん、厳しいなあ千尋は。そんなに姉の事が心配なのか?」
「悪いですか」
「いやいや、悪くはねえよ?」
なんて話しているところで、ふと千鶴へと視線を向ければ彼女は先を歩いている三番組の方へと視線を向けていた。
私も同じようにそちらへと視線を向ければ、斎藤さんがこちらの様子を窺っているように見える。
彼は私たちへと頷いて見せた。
すると、昨日永倉さんたちが言っていた『探って欲しい』という言葉を思い出す。
頷きは探れという意味なのかもしれない。
「千鶴?千尋?どうしたんだ。こんないい男と喋ってるのに、余所見なんてつれねえな」
「自分で言うのはどうかと思いますよ、才谷さん」
「手厳しいなあ……」