第15章 戦火の行方【沖田総司編】
「……怪しいな、そりゃ。詳しく調べた方がいいんじゃないか」
「……会津藩の立場を考えると、脱藩浪人とはいえ、土佐藩との間にいさかいを起こすべきではないと思うが」
「だからって、放っておくわけにゃいかねぇだろ。万が一ってこともあるし」
「とりあえず、本当に土佐浪人なのか、何の目的で京にいるのかぐらいは知っておきてえとこだよな」
確かにあの人は怪しいとは思った。
これは私が千鶴に近づかれたから警戒していたのもあるかもしれないが、でも怪しいとは思った男。
そう思っていれば永倉さんがとんでもないこと頼んでくる。
「だな。千鶴ちゃん、千尋ちゃん。そいつに会ったら探りを入れてくれねえ?出身とか、京にいる目的とかよ」
「探り……ですか?」
「私と千鶴がですか?少し無理のような……」
「そこをなんとか、な?」
そう言われてもと思った。
元々人に探りを入れるのは得意なわけじゃないし、怪しいと言っても悪い人には見えなかったし……。
そう思っていれば千鶴はしぶしぶという感じで頷いて見せていた。
「……頑張ってやってみます。怪しまれない自信はありませんけど……」
「……じゃあ、千鶴がそう言うなら私もやってみます」
新選組の迷惑にならないだろうか。
そう思っていれば、永倉さんは手をぱたぱたと慌てて振っていた。
「あーー、いや、今のは冗談だぜ!いくら何でも、そんな危ねえ真似はさせられねえし!」
「……存在そのものが冗談のおまえが、冗談言っても、受けるわけねえだろうが。少しは考えらよ。2人とも本気にしてただろうが」
「存在そのものが冗談って何だよ!今のは、さすがに傷付いたぞ!」
だけれど、探りを入れれるならやったみてもいいかもしれないと私は思った。
あの人は何だか怪しいと思っていたし、それで新選組の方々に少しはお役に立てる情報をあげれたらと思いながらも、お膳を並べるのであった……。
そして翌日のこと。
私と千鶴は、斎藤さんの三番組と共に巡察に出た時である。
「ーーあ!」
「どうしたの?千鶴」
「父様によく似た人が……」
彼女の言葉に私は足を止めた。
「あ……似てたの、着物だけだった……」
「ああ、本当に着物は似ているね……」
「……はあ」
千鶴は落胆するかのようにため息を吐き出した。
そんな彼女の肩に手を置きながら、慰めるかのように撫でていた時だ。