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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第15章 戦火の行方【沖田総司編】


お膳を並べる中、皆さんは私たちを気にせずに話を続けた。

「その時会津藩と一緒に行動してた隊士って、誰だ?まさか……」
「……そのまさかだよ。武田の奴、すぐ見境なく刀を抜きやがって」

武田さんという言葉に私は手を止める。
そういえば、あの人は八郎お兄さんの時にも刀を抜こうとしていた。

気が短い人なのだろうか。
そう思いながらお膳を並べていれば、襖が音を鳴らしながら開いた。

「……失礼。こちらに、近藤局長差おられるか」

噂をすれば……である。
広間に武田さんが姿を見せた。

「武田さん。近藤さんでしたら、土方さんの所にいられますよ」

そう私が言うと、武田さんは僅かに眉を寄せた。

「土方副長の……、なるほど」

武田さんは踵を返すと広間を出ようとしたが、その足をピタリと止めた。
そして私たちの方へと振り返る。

「……言っておくが、私は、見境なく刀を抜いたわけではない。あの土佐藩士が詮議に応じず、逃げようとしたのが事の発端だ。間違えぬよう」

言い捨てるかのように言った武田さんは、次こそ広間を出て行った。

「……何だあいつ、聞いてやがったのかよ」
「あんだけ隊と会津藩に迷惑かけといて、あの言い草か。反省の色なしだな」
「まあでも、一理あるんじゃねぇ?その土佐藩士だって、素直に身元を明かしゃいいのに、逃げようとしたのが悪いんだし」
「土佐藩には、勤王党という尊攘派の集まりがあったからな。我々に関わりたくなかったのだろう」

斎藤さんはそう言葉を零した。
すると何かを思い出したのか、永倉さんが斎藤さんへと尋ねる。

「……そういえば、この間斎藤が綱道さんを捜しに行った宿って、寺田屋だったよな?」
「そうだが、それがどうかしたのか」
「あそこの宿は薩摩藩士が懇意にしてるって話だが……土佐藩の脱藩浪人もよく泊まっていくらしいぜ」
「え?それって……」
「土佐藩の脱藩浪人……」

私と千鶴はそれぞれ斎藤さんへと視線を向ければ、彼は思案しながら言った。

「……もしかすると、先日あんた達に声をかけてきたあの男は、土佐浪人かもしれんな」
「どんな奴だったんだ?」
「確か……才谷梅太郎って名乗ってらっしゃいました」
「何処かの藩に務めているというよりも、浪人風な格好の人でしたよ」

2人で才谷さんの話をすると、原田さんが眉を潜めた。
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