第15章 戦火の行方【沖田総司編】
池田屋で沖田さんを倒した男、風間千景。
男は薩摩藩に所属していると土方さんから聞いた。
池田屋で平助君の額を割った男、天霧九寿。
彼もまた、風間同様に薩摩藩に所属していると斎藤さんから聞かされた。
最後に長州浪士と共に戦っていた男、不知火匡。
原田さんと対峙したと聞いた。
新選組の幹部と同等以上の力を持っているという彼らは、強大な敵と言える存在。
もしまた彼らと戦うことがあるのならば、新選組は大きな被害を受けることになるだろう。
「そんな敵と、また対峙することにならなければいいけれど·····」
ともかく。
長州の御所への攻撃は、会津藩と薩摩藩の協力の前に失敗となった。
そして彼らは京から逃げ出す際に、都に火を放ったのだ。
運悪く北から吹いた風は、京の町の一部や御所の南方を焼け野原へと変えた。
この火事が原因で、捕らえたていた尊皇攘夷の国事犯たちが一斉に処刑されたとも聞く。
この【禁門の変】の後。
長州藩は御所に向けて発砲したことを理由に、朝廷に歯向かった逆賊として扱われていくことに。
この事件がきっかけで、長州藩は【朝敵】となったのだった。
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ー元治元年・十月ー
秋が訪れ、葉が色を染め始めた頃のこと。
「よいしょ·····っと」
「よいしょ·····」
私と千鶴は昼食の膳を広間へと運んでいた。
そんな時である。
「つまり、会津藩と土佐藩の関係が、ややこしいことになっちまったってことか?」
「ああ。お互い一人ずつ腹を切って手打ちってことになったがら後味が悪いったらありゃしねえ」
聞こえてきた不穏な言葉に、私と千鶴は動きを止めた。
二人の話している内容ならば私と千鶴も少しだけ心当たりはある。
今年の夏、明保野亭という料亭で起きてしまった事件。
新選組と同行していた会津藩士が、手違いで土佐藩士を傷つけてしまったことが、両藩で問題となった。
そのせいで一時は会津藩と土佐藩の間が、険悪になったと。
「お、千鶴と千尋。もう飯の時間か?手が足りねえんなら、手伝うぜ」
「いえ、そんな·····」
「大丈夫ですよ、原田さん。私と千鶴で出来ますから」
「いいえよ。膳並べるくらい、しゃべりながらできるからな」
原田さんは笑いながらも、私たちを手伝ってくれた。