第15章 戦火の行方【沖田総司編】
原田さんの言葉に、平助君は目を見開かせていた。
彼の表情からして行く気満々だったみたいで、不満の声が彼の口から漏れる。
「えー!?でも、折角の晴れ舞台だし!」
ちらりと平助君は望みをかけたように土方さんへと視線を向けていた。
私には分からないけれども、平助君や他の幹部の方々は戦にでたいみたい。
「不参加に決まってんだろ。大人しく屯所で留守をしてやがれ!」
「うっ·····。土方さん、鬼!この鬼副長ー!!」
「なんだ、そりゃほめてんのか?簀巻きにされたくなきゃ黙ってろ!」
「··········あ、ああ」
流石、土方さんと言うべきなのだろうか。
平助君はぴたりも文句を言うことなく、その場に項垂れてしまった。
だけど土方さんは本気で怪我人だろうとも、言うことを聞かなければ簀巻きにしそうではある。
落ち込む平助君に、それまで静かに話を聞いていた山南さんが静かに笑みを浮かべながら声をかけた。
「藤堂君。怪我人は足手まといらしいですから、素直に屯所で留守をしましょう」
「しかたながねえか·····わかった。今回は留守してるよ」
「僕も今回は諦めようかな。参加したいけど本調子じゃないし。ちょっと外で涼んでこようかな」
沖田さんは小さくため息を吐き出すと、席を立って外へと出てしまった。
そして私はちらりと近藤さんへと視線を向けると、声をかける。
「あの近藤さん、私と千鶴も今回は屯所待機ですよね?」
彼は私の問に静かに頷いた。
「ああ。総司と平助が駄々をこねんよう、見張っておいてくれ」
「わかりました」
そしてついに、新選組は長州征伐へと赴いた。
屯所はそのせいなのかがらんと静かになってしまい、嫌に静まり返っている。
「·····することがないね、千鶴」
「そうだね千尋。·····留守って、なにをしてればいいんだろう?」
「·····近藤さんが言ってた通りに、沖田さんと平助君を見張っておく?」
その言葉に千鶴は少し考え込んでいた。
「確か、沖田さんは中庭で平助君と山南さんは広間にいたよね。私、平助君の様子を見てくるね」
「じゃあ、私は沖田さんを見てくるよ。あの人、無茶しそうで心配だから」
そうして、私と千鶴はお互いに平助君と沖田さんの様子を見に行くことにした。