第15章 戦火の行方【沖田総司編】
永倉さんも手に怪我をしていたけれど、本人がもう大丈夫と言い張っている。
私としてみればちゃんと手当をして、様子を見たいところなのだけれど。
だけど、沖田さんや平助君に比べたらまだ軽い方。
二人の怪我はかなり酷いものだったから。
「しかし総司と藤堂君が、怪我をするとはね·····」
「あれは池田屋が暗かったから!普段の戦いなら後れは取らないって!横合いから急に殴られたんだよ。おかげで、鉢金なんて真っ二つだしさ」
「拳で鉢金を割る、か。ずいぶんと豪気な奴がいるもんだ」
平助君はぶつぶつと言いながら、そして原田さんは可笑しそうに笑っていた。
「あと何だっけ?総司から逃げ切った奴もいたしな」
永倉さんが沖田さんへと話題をふる。
彼は薄く笑ってはいるけれど、その目はまったく笑っていなくて少し怖く感じてしまった。
「·····次があれば、絶対に逃がしませんよ。次に勝つのは、僕ですから」
池田屋の事件から少し時間はたっているものの、それでもまだみなさんは池田屋事件での話を思い出してはこうして語っていた。
ふと、斎藤さんだけが沈黙を続けているのに気がついた。
相変わらず静かな人だと思いながらも、私は彼に声をかける。
「·····あの斎藤さん、どうかされたんですか?」
「総司らを負傷させるほどの実力者が、あの夜、池田屋に居た理由を考えていた。長州こ者ではないと言ったそうだが、池田屋も人払いはしていたはずだ」
「それなのに、何故·····あの人たちがいたかを考えていたのですか?」
「ああ。池田屋の人間と浪士たちの目を盗み、何らかの目的で侵入したか、目的は違えども、行動を共にしていたのか·····」
そう考えると、あの人たちは一体何故池田屋にいたのか不思議でたまらない。
「·····今、確実にわかるのは、奴らが相当の実力者だということだけだ」
斎藤さんが静かな声でそう呟いた時だった。
襖が開き、近藤さんが顔を出して私たちへと言葉をかける。
「ーー会津藩から伝令が届いた」
近藤さんのその一言で、空気が一変する。
「長州の襲撃に備え、我ら新選組も出陣するよう仰せだ」
その言葉に、皆さんから歓声が上がる。
それに驚いた私は少しだけ目を見開かせてしまう。
「ついにきたか!待ちかねたぜ!」
「残念だったな、平助。怪我人はさすがに不参加だよな?」