第15章 戦火の行方【沖田総司編】
原田さんのまさかの言葉に、私と千鶴は目を見開かせてしまう。
「「えっ!?」」
参加するという事は、私たちは新選組の一員として出動しても良いという事なのだろうか。
でも、戦場で私たちのような小娘達が軽い気持ちで参加してもいいのかな。
ふと、私は千鶴へと視線を向ける。
正直言えば、千鶴を戦場に行かせたくない気持ちが大きい。
危険もあれば、最悪人の死体をまた見る事になってしまうのだから。
(それに、私は……血を見たら……)
だけど、お世話になっている新選組の方々のお手伝いはしたいという気持ちもあった。
そうやって悩んでいれば、千鶴が俯く。
「……私は、千鶴と留守番をしています」
人の死体を見るかもしれない。
それ以上に酷いものを見るかもしれないし、お役に立てるとは思わなかった。
だから参加しようとは思わずに、私は原田さんにそう伝えると彼は『そっか』と微笑む。
そして私たちは何とも言えない雰囲気のまま、屯所へと戻るのだった。
ー数日後ー
「お薬の準備ができました」
私と千鶴は、お盆に粉末状のお薬と日本酒の熱燗を載せて広間に入った。
この薬は石田散薬という名前で、なんと土方さんの生家で作られているらしい。
「総司と平助に飲ませてやってくれ。……それから、山南さんにもだ」
「おや、私も飲むんですか?私の傷は、もうふさがっていますよ?」
山南さんは驚いたように瞬きをしていれば、沖田さんが企んだような含みのある笑を浮かべた。
「試してみましょうよ、山南さん。この薬って何にでも効くらしいですから」
確かに、山南さんの傷はほぼ治ってはいる。
だけど未だに右腕は思うように動かないみたいで、そんな彼に皆分かっていた。
もう彼の右腕が元に治ることはないと……。
そんな山南さんから視線を逸らし、私は熱燗と石田散薬を沖田さんの前へと持っていく。
池田屋で沖田さんは吐血もしているからと、土方さんは心配しているみたい。
「どうぞ、沖田さん」
「ありがとう千尋ちゃん」
「石田散薬は熱燗で飲むのが粋だよな。うらやましいぞ、おまえら!」
すると、永倉さんの言葉に平助君が呆れたような顔をしていた。
「うらやましいなら飲めばいいだろ。新八っつぁんだって怪我人じゃねえか」
「酒はのみてえが……残念なことに俺の怪我はもう治っちまってるんだよなぁ」