第14章 動乱の音【沖田総司編】
お盆の上に置いていた袋を沖田さんに差し出すと、彼は金平糖を何粒か取り出してから口に放り入れる。
「ん、美味しい」
薬が苦手で、葱が嫌いで、甘いのが好き。
やっぱり子供みたいだなと思いながら、何となく微笑ましく思ってしまう。
そしてまた、私はついくすっと笑ってしまうと沖田さんが眉を寄せる。
「君さ、時折僕を子供扱いするよね」
「え!?」
「バレてないと思ってた?これでも、君より年上の成人した男なんだけどね」
にやりと笑う沖田さんに、私は悪い予感がした。
彼の笑みは意地の悪い事を思いついた時によく浮かべている物だ。
からかわれたり、悪戯されたりとしてきた事を思い出して慌てて立ち上がり逃げようとする。
だけど、彼の手がそれを許さなかった。
私の右手首をしっかりと掴んでいて、離してくれない。
「お、沖田さん……離してください」
「駄目だよ、千尋ちゃん。逃げようとしちゃ」
そう囁くように呟いた沖田さんは、私の腰へと手を伸ばしてきて絡めてくる。
驚いた私は目を見張り、身体を固めると彼は好機と見たのかまた笑みを深くした。
(近い、密着してる……!?)
沖田さんは腰を抱き寄せると、顔を近づけくる。
何をしようとしているのか分からず、私は驚いてばかり。
「ねえ、千尋ちゃん。離してほしい?」
「あ、当たり前です!」
「じゃあ、僕の事を【総司お兄さん】って呼んでみてよ」
「……え!?」
まさか、呼ばれる事を諦めていなかったことにまた目を見開かせた。
「な、なんで……」
「興味あるから、呼ばれたらどうなのかなって。僕さ、末っ子だから妹とかいなくて、呼ばれたことあまりないんだ。ほら、呼んでみてよ」
「え、いや……そんな……」
「じゃなきゃ、このままの体制だけど?」
私と沖田さんは密着した体制。
異性とここまで近づいたことの無い私は、顔を真っ赤にさせてしまう。
心臓は凄く妬ましいぐらいに騒いでいて、顔も凄く熱くなってきているのが自分でも分かる。
「わ、わかりました!」
「じゃあ、呼んでみてよ」
「……そ、総司……お兄さん」
小さな声で、そう呼んでみた。
沖田さんをそう呼ぶなんて、なんだか変な気分になると思っていれば彼は何故かにやりと笑う。
「千尋ちゃん、声が小さくて良く聞こえなかったからもう一回呼んでくれる?」
「はい!?」