第14章 動乱の音【沖田総司編】
沖田さんは苦いのは苦手らしい。
だから、薬をすぐには飲んでくれずにゴネてゴネてやっと飲んでくれるという事をずっと繰り返している。
自分の身体の為だから、直ぐに飲んでくれたら良いのに。
そう思いながら、私は沖田さんの部屋の前に到着して外から声をかけた。
「沖田さん、雪村です。入ってもよろしいでしょうか?」
「千尋ちゃん?薬なら、受け付けないよ」
「……はあ。失礼します」
沖田さんの言葉を聞いた私は、ふすまを開ける。
そして部屋の中を見れば、沖田さんは嫌そうな顔をしながら私を見ていた。
「お薬、お持ちしましたから飲んでください」
「……僕さ、要らないって言ってるよね?」
「そう言わずに飲んでください。沖田さんのお身体の為でもあるんですよ」
飲んでくださいと、私は薬と湯のみを沖田さんへと差し出す。
そんな私を沖田さんは嫌そうにまた見つめてくる。
「思ったんだけどさ、君って結構意固地というか頑固だよね」
「沖田さんだけには言われたくないのですが……」
「双子だって言うのに、千鶴ちゃんと全然似てないね。薬は飲みたくないから、要らない。というか必要ない」
そう言うと、沖田さんはごろんと横になると私に背を向けてしまう。
どうしても飲んでくれなさそうで、私は思わず溜息を吐いてしまった。
まるで子供を相手にしているよう。
診療所に来ていた、薬を嫌がる子供達の姿を思い出してつい微笑んでから呟いてしまった。
「子供みたい……」
「……子供?」
呟きが聞こえた沖田さんは、怪訝そうに眉を寄せながらこちらへと振り返る。
そして、私は慌てて自分の口を塞いでから首を左右に振った。
「いえ!そ、そうだ、沖田さん。お薬を飲まれたら、口直しに金平糖を持ってきたのでそれを食べていいですから。だから、お薬飲みましょう?」
近藤さんに、沖田さんは金平糖が好きだと聞いた。
これでなんとか薬を飲んではくれないだろうかと思って彼をじっと見ていれば、呆れたように彼は溜息を吐く。
「別に君が、必死になることないでしょう?」
そう言いながらも、彼は薬と湯のみを手に取ると嫌そうに薬を飲んでくれた。
今日はいつもより素直に飲んでくれたと驚いていれば、彼は手を私はと差し出してくる。
「金平糖、くれるんでしょう?薬を飲んだら」
「あ、はい!どうぞ」