第14章 動乱の音【沖田総司編】
助け舟をくれた土方さんに感謝しながらも、私と千鶴は勝手場へと急いだのであった。
夕食の時間になり、私は沖田さんが野菜を残している姿を見かけた。
葱を入れていた煮物であり、彼は綺麗に葱だけを残していたのである。
「沖田さん……。葱もちゃんと食べてください。身体に良いですから」
「嫌だ。僕、葱は食べないよ。というか、食べないって伝えてたのに何で入れてるの?」
「それは、身体に良いからです」
「何それ。絶対に食べないからね」
沖田さんは子供っぽく口を尖らせるとそっぽを向いた。
私より年上だというのに、何でこんなにも子供っぽいのだろうか。
「沖田さん!好き嫌いは駄目ですから、ちゃんとたべてください!」
「嫌だって言ってるでしょう」
「駄目です!その葱を食べてくださるまで、お膳は片付けませんから。それに残すことは、作って下さった農家の方に失礼です!」
「絶対に食べないから。ていうか君、生意気過ぎない?」
私を怯えさせる為なのか、沖田さんは私を睨みつける。
確かに怖いし怯えてしまいそうになったけれども、ここは引くつもりはない。
それに沖田さんは好き嫌いが多すぎるのだ。
「生意気でも何でも良いですから、食べてください。沖田さんは好き嫌いが多すぎです!」
「別に好き嫌いあっても良いでしょう……。執拗いよ、君って本当に」
「執拗くて結構です」
そんな言い争いをしていれば、原田さんが突然吹き出した。
突然の事に驚いて目を丸くしていれば、原田さんだけではなく平助君や永倉さんに近藤さんも笑っている。
「お前ら、まるで母親と子供みたいじゃねえか!千尋は、母親みてえだし、総司はわがままを言う子供じゃねえか」
「本当だよな!」
「総司、わがままを言わずにきちんと食べなさい。千尋君の言う通り、農家の方に失礼だぞ」
「近藤さんまで……。まあ、近藤さんが言うなら、食べますけど」
「近藤さんの言うことなら聞くんですか!?」
私があれだけ言っても聞いてくれないのに、と思いながら沖田さんを見ていれば彼は拗ねたようにしながらもちゃんと葱を食べてくれた。
だけど、彼のわがままはこれだけで終わるわけじゃない。
沖田さんは池田屋で負傷したので、薬を出されていて、私は薬と湯のみを手にして沖田さんのお部屋へと向かう。
「今日は直ぐに飲んでくれるといいんだけれど……」