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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第3章 巡察【共通物語】


店先の縁台な腰を下ろせば、斎藤さんが声をひそめながら説明をしてくれた。

「……寺田屋は元々、薩摩藩御用達の宿と言われていてな。その為か、西国の浪士が立ち寄ることが多いと言われている」
「西国の、浪士……」

西国と言えば、尊皇攘夷派の代表とも言える長州藩が直ぐに思い浮かんだ。
そして直ぐに違和感を覚える。

何故、幕府に協力している父様が尊皇攘夷派とも呼ばれる西国の浪士が集まる寺田屋に出入りしているという情報があるのかと。

「父が、どうしてそんな場所に?」
「わからぬ。単なる偶然か、あるいは……」
「尊皇攘夷派と、関わりを持っている……」

私の言葉に斎藤さんは否定はしなかった。
恐らく、斎藤さんも父様が尊皇攘夷派と関わりもっているかもしれないと考えているのだろう。
そして千鶴も、同じ事を思ったのか顔を少しだけ強ばらせていた。

でも、父様は幕府のお役目で京に来たはず。
尊皇攘夷派と関わりを持つというのは、幕府に目を付けられてしまう行為だ。
だからきっとなにか事情があるはず。

「とはいえ会津藩お預かりという我々の立場を考えると、不用意に寺田屋に立ち入るわけにもいかぬ。ゆえにあんた達にはここで、宿に出入りする客の様子を確かめてもらおうと思うのだが……、構わぬか」
「えっ?でも……」
「俺は、尊攘派の浪士に顔を覚えられているかもしれぬ。ここで張り込みをするのは差し障りがあろう」
「確かに……。でも…」
「案ずるな。俺も、近くで情報集めを行うつもりだ。何かあれば直ぐに駆けつける」
「……わかりました」
「それでは、頼んだぞ」

そう言い残すと斎藤さんは直ぐに歩いて行ってしまい、彼の後ろ姿を見送る。
斎藤さんは店を出入りする客の様子を確かめるように言っていたが、この近くで聞き込みもした方がいいかもしれない。

「千鶴、私はあっち側で父様の事聞いてみるから。千鶴は茶店の近くで聞いてみて」
「うん」

少し茶店から離れた場所で、私は父様の事を町の人や近くの店の方に聞いてみた。
すると確かに、剃髪の蘭方医が数日前から寺田屋に出入りしているのを見たという人が何人かいたのだ。
でも、昨日からは見ていないとのこと。

「……はあ。昨日から見ていないか……」

剃髪の蘭方医という情報はあったが、父様という確実な手掛かりはなかった。
その事に落胆してしまう。
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