第14章 動乱の音【沖田総司編】
いや、逃げられたと言うよりもまるで見逃されたような感じがあった。
すると沖田さんは悔しげに歯を噛み締めながら、男が出ていった方を睨みつけてて言葉を洩らす。
「くそっ……!僕は、僕はまだ戦えるのに……」
「……沖田さん」
弱々しく言葉を洩らす彼に、眉を少しだけ下げる。
そして同時に疑問が湧き上がり、彼に言葉を投げかけた。
「沖田さん、何時も私に邪魔になれば斬るって、殺すって言ってたのに何で守ってくれたんですか?あの時、助けなくても良かったのに……」
貴方に守られる理由は、私にはない。
それなのに何故彼はあの時、助けてくれたのかそれが理解出来なかった。
私を庇ってくれた沖田さんが理解出来ない。
邪魔になってたはず。
それなのに沖田さんは庇ってくれたのだ……自分は血を吐いて苦しかっただろうに。
すると沖田さんは私の言葉に、不思議そうに目を瞬かせる。
「……そういえば、なんでだろう?」
「なんでって……」
「僕にもよくわからないけど、でも、次は、ちゃんと殺さないとーー」
それだけを呟くと、沖田さんはその場に倒れ込んだ。
「沖田さん!?沖田さん!!」
慌てて駆け寄れば、ちゃんと彼は息をしていた。
気を失った事に気がついて、少しだけ安堵していればある事に気がつく。
下から聞こえていた戦の音が何時の間にか止んでいる。
「もしかして、終わったの……?」
「総司!大丈夫か!?」
終わった事に安堵して、私もその場に座り込んでしまう。
すると、近藤さんの声と共に階段を登ってくる足音が聞こえてきた。
「総司!雪村君!!」
「こ、近藤さん……沖田さんが、血を吐いて倒れられて……」
二階に上がって来た近藤さんに説明すると、彼は急いで仲間を呼んで沖田さんは板に乗せられて運ばれることになった。
恐らく臓物が傷付いているはずだから、戻ったらきちんと療養しなければいけない。
そんな事を考えながら、私も下へと降りた。
そして怪我をした隊士の方々に応急処置する事になったが、応急処置していた場所は池田屋の中。
(血の匂い……死体、血の匂いがする……)
あちこちからする血の匂いと、目に入ってくる死体。
気持ち悪さと吐き気が込み上げてきて、手はだんだんと体温を失っていく。
そんな時だった。
「おい、千尋ちゃん!大丈夫か!?顔色悪いぞ!」
「……なが、くらさん……」