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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第14章 動乱の音【沖田総司編】


「……血!?沖田さん、大丈夫ですか!?」

思わず私は彼の元に駆け寄った。
だけど沖田さんは私に返事をくる余裕もないようで、苦しげに咳き込み、その度に口から血が零れていく。

「沖田さん……!」

これでは沖田さんはもう戦える状況じゃない。
私は沖田さんを支えながらも、近くに落ちていた自分の刀を拾い上げて浪士を睨みつける。

「……おまえも邪魔立てする気か?俺の相手をすると言うのなら受けて立つが」
「……ええ、受けて立ってもらいますよ」

浪士の刀の切っ先が私に向けられる。
だが、私はそれに怯まずに立ち上がると刀を相手へと向けた。

私がどうこう出来る相手とは思えない。
だけど、なんかしなければいけないのだ……沖田さんは戦える状況じゃないのだから。
そう思っていた時だった。

「沖田さん!?」

沖田さんが、私を庇うように前に立ったのだ。

「沖田さん、駄目です!動いたら!!骨が折れているかもしれないのに……!」

骨だけじゃない、内蔵が傷付いているかもしれない。
血をかなり吐いて動くのも辛いはずなのに、彼は立っていた。

「……あんたの相手は僕だよね?この子には手を出さないでくれるかな」

彼は左腕を伸ばして、私を前に出さないように庇って立っていた。
すると、そんな私たちを見ていた男がせせら笑う。

「愚かな。その負傷で何を言う。今の貴様なぞ、盾の役にも立つまい」
「ーー黙れよ、うるさいな!僕は、役立たずなんかじゃないっ……!」

男の言葉に、沖田さんが叫んだ。
その言葉には怒りがこもっていて、こんなに沖田さんが怒りを顕にしているのは初めて見て驚いてしまう。
だけど、私は彼の腕を思わず掴んでいた。

「叫んではいけません、沖田さん!血を吐いているんですから!」

浪士を何とかしなければ、本当に沖田さんが危うい。
そう思って男を見れば、その目はまるで興味なさげであり観察するように見ていた。

やがて、男は唐突に刀を納めたのだ。
その行動に私は思わず目を見張り、小さく呟いてしまう。

「何故……急に」
「会合が終わると共に、俺の務めも終わっている。多少は面白かったぞ、新選組。だが、あの程度の腕でいい気になるな」

つまらなさそうに呟く男に、眉を寄せる。
そして男は開かれたままの窓から、身軽な仕草で外に飛び出したのだった。

「……なに、あの男。逃げたの?」
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