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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第14章 動乱の音【沖田総司編】


「まあまあ。突っ込むのは気心しれた方がいいだろ。というわけだから、武田さんは外を頼むぜ」
「……ふん」
「雪村君。少し、池田屋から離れていてくれるか。ここは危険だ。浪士が下りてくるかもしれん。……もっとも、逃がすつもりはないがな」

近藤さんの瞳が月明かりでぎらりと光ったのが見えた。
まるで餌を求めた獰猛な獣のような目に、私の背筋がぞくりと震える。
その瞳になっているのは近藤さんだけじゃなかった。

ここにいる人たちは今から始まる状況を、まるで楽しんでいるかのよう。
人間というのはやっぱり、争いが好きなんだと思いながら私は一歩だけ下がって頷いた。

「……分かりました」

私の返事を聞いた近藤さんたちは、池田屋へと踏み入った。

「会津中将お預かり浪士隊、新選組。ーー詮議のため、宿内を改める!」

近藤さんの高らかな宣言が、こちら側まで聞こえてくる。
そして宿内のざわつきも聞こえてきた。

「わざわざ大声で討ち入りを知らせちゃうとか、すごく近藤さんらしいよね」
「いいんじゃねえの?……正々堂々名乗りを上げる。それが、討ち入りの定石ってもんだ」
「自分をわざわざ不利な状況に追い込むのが、新八っつぁんの言う定石?」

沖田さんに永倉さん、平助君は好戦的な笑みを浮かべながら中へと駆け込んでいく。
これから斬り合いになるというのに怖いないのだろうか。

「御用改めである!手向かいすれば、容赦なく斬り捨てる!」

そして、激しい戦いが始まる。
刀同士がぶつかり合う音、そして怒号に私は眉を下げながら息を飲んでいた。
嫌な記憶が蘇ってきそうで、耳を思わず塞いだ。

(怖い……嫌だ、来るんじゃなかった)

戦いの音を聞きながら、私は建物の影に隠れながら蹲る。
聞きたくない悲鳴と刀同士がぶつかる音に怒号は耳を塞いでいても聞こえていた。

「畜生、手が足りねぇ……!誰か来いよ、おい!誰かいねえのか!」
「……え」

誰かいないのかと言われても、周りには誰もいない。
それに武田さんたちは、周りを見張っていて永倉さんの声は聞こえていないようだ。

「……どうすれば」

池田屋に入っていけるとしたら、私だけ。
だけど私なんかが入っても何が出来るのだろうか。
中はきっと血だらけ……そう想像するだけで吐き気を感じてしまう。
そんな時、近藤さんの叫び声が聞こえてきた。
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