第14章 動乱の音【沖田総司編】
私たちの目の前には近藤さんが立っていた。
出陣の為に、いつもと違う色の羽織に鉢金を見につけている。
「あ、その…なんだか、じっとしていられなくて」
「なるほどな。君たちの気持ちはよくわかる!討ち入り前で、皆も高揚しているしな」
「はい……」
千鶴の耳から手を離しながら、私は近藤さんの話に相槌をうつ。
確かに討ち入り前で、隊士さんたちは高揚している様子がよく分かる。
「どうかね、君たちも一緒に来るか?」
「え!?」
「い、行っても大丈夫なんですか……?私たちが行っても足手まといになるだけでーー」
「実は、腹をこわして動けない隊士が多くてな、人手がたりんのだ。伝令役になってもらえるとありがたいんだが……。もちろん、君たちに無理はさせん」
近藤さんの言葉に私たちはお互いの顔を見合わせるが、直ぐに頷きあった。
「……伝令、くらいでしたら」
「それぐらいでしたら、できます」
私たちの言葉に近藤さんは満面の笑みを浮かべた。
そして、ふと近藤さんが身にまとっている羽織について疑問があったので尋ねてみる。
「あの……近藤さん。今日はいつもの浅葱色の羽織と違いますけど……」
何時もは目立つ浅葱色の羽織。
だが、今日身につけているのは白色だった。
「これか?暗いところに押し入ったときに、すぐに仲間だとわかるようにな」
「なるほど…」
「白の隊服もあるんですね」
そして、ついに出陣する時刻。
私と千鶴はそれぞれ伝令をする為、私はは近藤さんたちと池田屋へと向かい、千鶴は屯所で待機することになった。
戦闘が起きるからといい、比較的に刀を扱える私が池田屋に向かうことが決まったのだ。
ーー亥の刻。
新選組と私は池田屋に到着した。
そして、近藤さんに頼まれて池田屋周辺を走ってからまあ池田屋の前に戻ってくる。
「……こっちが当たりか。まさか長州藩邸のすぐ裏で会合とはなあ」
「僕は最初からこっちだと思ってたけど。奴らは今までも、頻繁に池田屋を使ってたし」
「だからって古高が捕まった晩に、わざわざ普段と同じ場所で集まるか?普通は場所を変えるだろ、常識的に考えて」
永倉さんは池田屋の様子を見ながら、呆れたように肩を竦めて見せる。
そんな彼を見ながら、沖田さんは相変わらずの笑顔を浮かべるだけ。
「じゃあ、奴らには常識が無かったんだね。実際こうして池田屋で会合してるわけだし?」