第14章 動乱の音【沖田総司編】
巡察に同行するようになってから、この光景はよく見るようになった。
町の人達は新選組を恐れているようで、目を合わせようともせず息を殺すように端によっている。
怖い人達もいるけれども、優しい人達もいる。
そして怖いと思っていたけれども優しい人がいるのだ。
昨夜の土方さんのように、ぶっきらぼうだけども気遣いをしてくれる人が。
それを知って欲しいと思いながら、私は町の人に声をかけた。
「あの、すみません。お尋ねしたいことがありまして……」
沖田さんの一番隊の巡察に同行しながらも、私は道行く人たちに父様の事を尋ねていった。
「すみません。実は、人を捜しているんですが……江戸なまりのある四十歳くらいの男性で、頭は丸坊主の優しい顔立ちの人でーー」
何人目かの人にそう聞けば、その人は私が説明した事に何か思い当たるものがあったようで『ああ…』と言葉を零しながらある場所へと指をさす。
「そんな雰囲気の人なら、しばらく前に、そこの桝屋さんで見かけたよ」
彼が指差した方を辿るように見れば、そこには一軒の薪炭店があった。
「教えて下さりありがとうございます!」
「いいえ。捜している人、見つかればいいね」
「はい!」
早速、桝屋さんという店に向かおうとした時、沖田さんが声をかけようとした。
だが隊士さんの厳しい声が聞こえてくる。
「貴様ら浪人か?主取りなら藩命を答えろ!」
「あーあ。よりにもよって、こんなところで騒ぎを起こすなんてね……!」
素早く刀を構えた沖田さんは、直ぐに渦中へと飛び込んでしまった。
騒ぎの近くにいた人達は、まるで蜘蛛の子を散らすように悲鳴を上げて逃げ惑う。
沖田さんに桝屋というお店に行ってもいいか聞こうとしたが、これは聞ける状態じゃない。
どうしようかと悩んでいれば、逃げ惑う人の波に押されてしまった。
「わっ!?」
これでは沖田さん達に近寄れない。
そう思いながら、小競り合いが終わった時に行ってもいいか聞こうと思いながら巻き込まれないように裏通りに入って様子を伺っていた時だった。
「坊っちゃん、そこの坊っちゃん。巻き込まれんよう、うちの店へ入りや?」
「え?」
見知らぬ中年ぐらいの男性が声をかけてきて、私へと手招きをしていた。
どうやら助けてくれようとしているらしく、その親切心に甘えようか悩みながら、ふとある事に気がつく。