第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
彼の想いと言葉に、照れてしまうのだ。
ずっと言われてもきっと私は慣れることはできないだろう。
そう思っていれば、歳三さんは私の頬に手を伸ばすと優しく撫でてきた。
「……最近、終わりがくるのが怖くなった」
「え……?」
「おまえとの暮らしは、飽きねえからな。ずっと生き続けてえって、思うことがある」
羅刹となり、寿命を削られた歳三さんの命がいつ尽きてしまうのかは分からない。
明日なのか、明後日なのか……それさえも分からない。
「てめえの運命を潔く受け入れて散るってのは、綺麗な死に様かもしれねえが……。……終わりを求める必要なんざ、ねえよな。生きてえから、あがき続ける。そっちの方が、性に合ってる」
「そうですね」
私は桜を見上げながら、自身の腹部を撫でる。
そして彼へと視線を向けてから、私は告げた。
「歳三さんには、まだまだ生き続けてもらわなけれはいけませんしね」
「ん?急にどうした」
「……だって、貴方が生きる理由は私だけじゃなくなるのですから」
そう言葉にすると、彼の瞳は大きく見開かれる。
歳三さんは私を見つめると、身体を固めて動かなくなってしまう。
「……それ、は……つまり、そういうこと、なのか?」
やっと歳三さんは言葉を零し、私がさっきから撫でている腹部へと目を移す。
「ややこが、できました」
私のお腹には、小さな命が宿っていた。
歳三さんと私との間にできた、ややこを私は腹部の上から優しく撫でる。
少し前から具合が悪いことが続いていた。
吐き気や食欲の低下、そして食べ物の好みが変わったり微熱が続いたり。
(お医者様に行った時に、初めて知った……)
このお腹にややこがいると。
その時私は涙を流す程に、嬉しくてたまらなかった。
だって私のお腹に、歳三さんが生きている証が育っているのだから。
「このお腹に、貴方との子供がいるんですよ……歳三さん」
歳三さんは目を見張ったまま固まっていた。
だけどやがて、彼はその表情を柔らかくさせる。
「……俺と、おまえの子供が……ここにいるんだな」
「はい」
歳三さんはやがて目を細めて、その目元に涙を薄らと浮かべていた。
そして恐る恐ると私の腹部に触れると、優しく優しく撫でてから微笑む。
「そうか……俺は、父親になるんだな。父親か……」
言葉を噛み締めるように、歳三さんは呟いた。