第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
私はそんな歳三さんの手に、自身の手を重ねる。
お腹にややこがいると知った時、私は彼が生きている証ができた以外にも喜ぶ理由ができた。
だって彼に、生きる理由を作ってあげれたから
「千尋……おまえは、いつも生きる理由を俺にくれるんだな。ますます、死ねなくなるじゃねえか」
「そうですよ。歳三さんはまだまだ、死ねないんです。この子の為にも、私の為にもまだまだ生きてください。この子と私を置いていかないでくださいね」
「当たり前だ」
歳三さんはそう言うと、私の事を抱き締めた。
彼の腕は僅かに震えていて、肩がじわりと濡れるのを感じる。
あの歳三さんが泣いているのだと気が付き、私は少しだけ驚いた。
でも、同時に喜びが込み上げる。
彼が泣く理由が、悲しみじゃなくて喜びだから。
「俺を、父親にさせてくれて、ありがとうな……」
「はい」
「……男か女か、楽しみだな」
「そうですね。男子か女子か……産まれてくるのが楽しみです」
すると、歳三さんはゆっくりと私から身を離す。
彼の瞳にはまだ涙が浮かんでいて、目尻を赤く染めながら微笑んでいた。
そして彼は穏やかな声で囁く。
「千尋、俺に生きる理由をくれて……ありがとうな」
そう言葉にした彼の顔がゆっくりと近付き、私は静かに目を閉じる。
そして唇に彼の暖かい唇が重なり、静かな穏やかな口付けを交わした。
ここで、私たちはこれかも生きていく
新たな命を育みながら、この大地でーー
ー土方歳三編・閉幕ー