第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
ー翌日ー
弁天台場が集中砲火を受けている。
その知らせが土方さんの元に届き、新政府軍な総攻撃が始まったのを確信させた。
そして弁天台場の戦況が厳しい事を聞いた土方さんは、援軍を送ることを即断する。
「俺は、弁天台場の援護に向かう。……千尋、おまえも来るな?」
「勿論です」
私の言葉に、土方さんは満足気な笑みを浮かべる。
もう彼は私を置いていこうとしない、こうして傍に居させてくれるのが私も嬉しかった。
そして、土方さんは馬を走らせた。
私は馬が扱えない為、馬に乗る彼の後ろに乗せられる。
風を切りながら、森の中を走り抜けて弁天台場を目指す道中の事だった。
一発の銃声が鳴り響いた。
「ぐっ……!」
強い衝撃に、土方さんは声を漏らして身体が揺れた。
そして銃声に驚いた馬が、私たちを派手に放り出してしまう。
「痛……っ!」
馬は驚いたことにより、暴れながら走り去ってしまう。
茂みに放り出されたことで、私は怪我をせずに済んだが……。
「土方さん!!」
視線の先にいる土方さんが横たわる場所が、真っ赤に染まっていた。
彼が血を流しているのは何度もこの目で見てきたが、その今までよりも酷い出血。
「ひじ、かたさん……土方さんっ!!」
嫌な記憶が蘇る。
里が襲われた際に、銃で撃たれて血を流していく同胞の姿と土方さんが重なった。
荒くなる息、殴られたかのような目眩。
私は荒い息を吐きながらも、土方さんに触れて何度か名前を呼んだ。
「ん……ん……?」
「土方さん!」
彼の眉間が僅かに皺を寄せる。
絶命してもおかしくないほどの深手だが、羅刹の力はなんとか土方さんの命を繋ぎ止めてくれたようだ。
「しっかりしてください、土方さん!」
私が叫ぶと、彼の瞼が震えながらゆっくりと開く。
「千尋。……怪我は、ねえか?」
「ありません!私より、自身の身体を気遣ってください!」
彼の優しさに嬉しさと怒りが込み上げ、涙が溢れて出していく。
「そう、怒るんじゃねえ。惚れた女の心配ぐらいは……させろ」
「……土方さん」
「……新政府軍に気付かれると、面倒だ。ここから離れて、傷が癒えるのを待つぞ」
何とか立ち上がった土方さんは歩きだそうとするが、その身体は不安定に揺れている。
私は慌てて彼に駆け寄ると、土方さんに肩を貸して身体を支えた。