第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
私の勘違いなのかもしれない。
都合のいいように解釈しているかもしれない……そう思っていた。
だけど今、明確な言葉で告げられた。
そのことに私は息が出来なくなるんじゃないかと、そう思ってしまう。
「新選組を率いるって務めを果たした後なら、死んでも構わねえと思ってた」
じわりと涙が浮かぶ。
言葉が出ずに、ただ私は土方さんの事を真っ直ぐに見ながら立ち尽くすだけ。
彼が抱えていたものは、重くて苦しい。
私には想像出来ないもので、それが無くなったら土方さんは居なくなってしまう。
何度もそう思い、また彼の言葉を聞いて思ってしまった私の不安を拭うように土方さんは優しい言葉をかけてきた。
「死にてえと思ってるわけじゃねえ。ただ、生きる目的がなくなっちまうだけだ」
彼の本音をようやく聞けた。
何時もなら、心に踏み込ませない彼が心の奥を見せてくれている。
それが嬉しくて、同時に切なくて涙が零れていく。
「道標としての役割さえ果たし終えりゃ、俺が生き死にに頓着する理由も消えちまうんだ」
彼の役割や受け継いだもの。
かつての局長の芹沢さん、近藤さん、山崎さんに井上さんや山南さんに平助君や原田さん。
そして多くの隊士の方々から受け継いできたもの。
今、その重荷を下ろした瞬間彼の生きる目的が消えてしまう。
新しいものがなければ、彼は生きる目的を見失ってしまうのだ。
「……だが、生きたいと思う理由ができた」
「よかった……良かった」
何処か死に急いでいた彼が、生きることに執着してくれなかった人が今、生きたいと思ってくれている。
それが嬉しくて、私は涙を溢れさせた。
「生きたいと、思ってくれて……」
「おまえが傍にいてくれるから……、まだ生き続けてえと思えるんだ」
「私が……生きる、理由に……?」
私が、彼が生き続けたいという理由になっている。
その事に目を見張らせながらも、少しだけ不安になってしまった。
こんな私が、この人の生き続ける理由になれるんだろうかと。
「私……、私は……」
ちゃんと、貴方の生き続ける理由になれますか?
そう聞く前に、土方さんは静かに私を抱き寄せ、密やかな吐息が唇を掠めた。
その直後に彼の柔らかく暖かい唇が、私の唇に触れて口付けが落とされる。
私を閉じ込める腕が愛おしくて、私は彼の背中に手を回しながら自分で彼に身を寄せた。