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君ノ為蒼穹に願ふ【薄桜鬼真改】

第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】


胸がじわりと熱くなる。
今まで『支えて欲しい』と言われたり、自分で『支えたい』とは思ってきた。
でもこうして【支えれるのは】と言われたのは初めてだった。

「私に、土方さんを……支えれるでしょうか」

支えてこようとしたけれど、私はちゃんと土方さんを支えることは出来るだろうか。
そんな不安が過ぎると、それを吹き飛ばすように相馬君が言葉をくれた。

「何を言ってるんですか!雪村先輩以外に、できるはずがありませんよ」
「相馬君の言う通りです。あの人が誰より心を許しているのは、君ですから」
「千尋なら、きっと土方さんを支えれるよ。ううん……もう、支えているよ」
「……はい」

相馬君に島田さん、そして千鶴の言葉に私は目頭が少し熱くなっていくのを感じた。
そして改めて思った……土方さんを、彼の心を私が支えていこうと。

私は改めて三人へと頭を下げた。
武運と共に、また生きて会えることを祈りながら土方さんの背中を追いかけたのだった。


五月十日の夜が更けた頃。
土方さんが、不意に小さな呟きを洩らした。

「仕掛けてくるなら、明日だろうな」
「……はい」

もう、新政府軍はすぐそこまで迫っている。
きっと明日には箱館は戦場となってしまうのだろう。
そして私が今いる五稜郭が、最後の砦となる。

「……本当に、いいんだな?」

土方さんは念を押すように、私にそう短く聞いてきた。
もう私の気持ちは決まっている、彼の傍から離れないという気持ちが。

「最後まで、私は貴方のお傍にいます」

私の言葉を聞いた土方さんさ、やがて諦めたような息を洩らした。
そして苦笑を浮かべながら私を真っ直ぐに見つめる。

「女に言わせてばかりじゃ、格好つかねえな」
「……え?」

土方さんの瞳が真っ直ぐに私を見る。
彼の唇は何処か、引き結んだようになっていて何かを言うのを躊躇っている気がした。

「あの、土方さん……?」

どうしたのだろうと、少し不安になって彼を呼ぶ。
すると土方さんは静かに言葉を吐き出した。

「俺が誰より守りたいのはおまえだ。俺は……、おまえに惚れてるんだろう」
「……あ」

彼の言葉に、私は息を呑んだ。
私はずっと……何時からなのか分からないけれども、土方さんをお慕いしていた。
最近は彼から好意を向けられている少しだけ、気付いてはいた。

でも、確信は出来なかった。
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