第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
それが少し寂しくもあるけれども、私もそろそろ姉離れというものをしなきゃいけないだろうかも苦笑を浮かべていた時だった。
島田さんが、大鳥さんを連れて戻ってきた。
「……すまない、土方君。松前口を落とされてしまったのは、僕の力が及ばなかったせいだ……」
「勝敗は兵家の常、ってな。過ぎたことを言っても始まらねえよ。あれは、兵を分散させたのが悪かったんだ。数に勝る新政府軍を迎え撃つなら、台場と五稜郭に戦力を集中させるべきだろ?」
「弁天台場は、我々にお任せください。この命をかけて守り抜きます」
「そうです!【誠】の旗がある限り、俺たちは土方さんと共に戦い続けます!」
島田さんと相馬君の言葉に、土方さんは僅かに眉間に皺を寄せた。
「……馬鹿なことを言ってんじゃねえよ。ここの指揮官は大鳥さんだってことを忘れるな」
「今回は、僕も【誠】の旗を掲げるよ。……それなら何の問題も無いだろう?この旗が折れてしまわない限り、僕らも負けないような気がするんだ。僕は負け続きだけど……、志は、最後まで折りたくないからね」
「陸軍奉行が縁起をかつぐのか?しっかりしてくれよ、大鳥さん」
ふと、その場の皆が笑顔になっていた。
言葉を交わすだけで、不思議と心が通いあっているかのようで私も釣られて笑みが浮かぶ。
「大鳥さん、島田、そして相馬。弁天台場を頼む」
土方さんは静かに微笑むと、踵を返して歩き始めた。
そんな彼を見てから私は千鶴の手をぎゅっと握ると、千鶴は私の身体を抱きしめてくる。
「千尋、また会おうね」
「……うん」
お互い、短い間だけれども抱き締めあう。
そしてお互いから身体を離してから、私は島田さん達に頭を下げた。
「……ご武運を」
そして歩き出そうとした時だった。
「千尋君!土方さんを頼みます!」
驚いて、島田さんの方へと振り返ると彼は真剣な表情をしていた。
この戦が始まって、幾度なくその言葉を聞いてきた私は、頷いて見せる。
「はい。私にできる限りのことをします。散っていた皆さんの分も、命をかけて……」
「身体を張る必要はありません。君には、土方さんの心を守ってほしいんです」
「土方さんの、心……」
「土方さんは強い方ですが……、その強さの裏で一人苦しむ方でもあります。傍で支える人間が必要です。……俺は、それが千尋君だと思っています」