第13章 雪舞う大地で貴方と【土方歳三編】
「何言ってやがるんだ。まだ戦いは始まってねえんだから、無事に決まってるだろうが。なあ?」
「そんな……心配してくださって、ありがたいです」
「千尋君も、元気そうでほっとしました。どうですか?調子の方は」
「はい。特に変わらず……土方さんのお傍に置いてもらっています。島田さんには敵いませんけど、頑張って土方さんをお助けします」
そんな私の言葉に、島田さんは柔らかい笑みを浮かべる。
「……いや、君には誰もかないませんよ」
「え?」
「確かに。土方さんに勝てるのは、千尋先輩だけですからね」
「そうだね。土方さんに勝てるのは千尋だけだよ」
なんだか、前にも似たような言葉を言われた気がすると思いながら苦笑を浮かべる。
すると土方さんは呆れたようにため息を吐くと、微笑みを浮かべた。
「おまえら、その辺にしておけよ。こいつがこれ以上調子に乗ったら、どうするんだ」
「土方さん……調子に乗るってなんですか、調子に乗るって!」
「これは、申し訳ありません。つい……」
その場には笑いが起きる。
賑やかなその雰囲気に、私も釣られて笑っていれば不意に土方さんさ相馬君へと視線を向けた。
「……相馬」
「はい、何でしょう?」
「例の絵、ありがとよ」
「礼には及びません。井吹もきっと、喜んでいると思います」
「……そろそろ俺も、背負った荷物を下ろす頃合なのかもしれねえな。後のことは、よろしく頼むぜ」
不穏にも捉えれるその言葉に、相馬君の表情は強ばっていく。
彼も土方さんの言葉にただならぬ気配を感じたようで、ぎこちない表情で問い返す。
「あの……、それは一体、どういう……」
だが、土方さんはその時に答えない。
ただ優しい眼差しで相馬君を見つめるだけだが、相馬君は彼の表情から何かを読み取ったようだ。
「……わかりした、お任せください」
「ああ」
相馬君の言葉に、土方さんは満足気にしながら頷く。
「島田。大鳥さんを呼んできてくれるか?話がある」
「わかりました。少々お待ちください」
島田さんは土方さんに一礼すると、直ぐに大鳥さんを呼びに向かった。
その間、私は千鶴と会話をしながらも一時の穏やかな時間を過ごしていく。
この戦が始まってから、千鶴と一緒にいる機会が減った。
それぞれ傍にいたい人ができてなのか、あまり一緒にはいる事が無くなっている。